Yahoo!の3億4000万ユーザーを支えるサポートシステム

米Genesysは米国ラスベガスにおいて同社の年次ユーザーカンファレンス「G-Force 2006」を開催している。米Yahoo!がGenesysのコンタクトセンター製品を利用して3億4000万人という膨大なユーザーをサポートするシステムを構築したことが紹介された。

» 2006年05月25日 14時08分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 コンタクトセンターソリューションを提供する米Genesysは米国ラスベガスにおいて同社の年次ユーザーカンファレンス「G-Force 2006」を開催している。2日目となった5月24日は、米Yahoo!がGenesysのコンタクトセンター製品を利用して、3億4000万人という膨大なユーザーをサポートするシステムを構築したことが紹介された。

 講演した米Yahoo!のグローバルカスタマケア担当のバイスプレジデント、ティッシュ・ウィットクラフト氏は、「Yahoo!ブランドを認識してもらうことを何よりも重視している」と同社のビジネスの基本的な考え方を話す。そのために、顧客を「無料ユーザー」「プレミアム」「ハイバリュー」の3つのセグメントに分けているという。

米Yahoo!のグローバルカスタマケア担当のバイスプレジデント、ティッシュ・ウィットクラフト氏

 ポイントの1つは、収益を生まない大量の無料ユーザーに対していかにサービスを提供するのかにある。Yahoo! Mailは20億アカウントにも上るからだ。一方、同社に広告を出している企業の製品を買っている顧客を「ハイバリュー顧客」と位置付け、その顧客をどのようにサポートしていくかが最重要の課題と位置付けている。

 こうした大量のユーザーをサポートするためのコンタクトセンターのプラットフォームとして、Yahoo!はGenesysの製品を採用している。

 同社の顧客サポートチャネルは年間5200万のトランザクションがあり、ヘルプページのページビューは月間1億2000万にも上るという。チャネルの内訳は電話が25%、電子メールが75%。大量の無料ユーザーを抱える同社は、セルフサービスによるサポートが最も適していると考えている。

 具体的には、GenesysのIVR機能であるGVP(Genesys Voice Platform)を利用して自動音声応答システムを構築した。また、通信費をコントロールするためにも、Genesysのフレームワークとルーティング機能を活用している。同社はさらに充実したサービスを、あまり手間を掛けずに提供するために、Instant Messengerを活用したサポートを構想している。

Instant Messengerを活用

 ウィットクラフト氏は、「IMを使ったサポートシステムの構想はこれが世界初公開になる」と述べ、IMベースの顧客サポートを構想していることを明らかにしている。

 IMを利用した顧客サポートでは、オンラインになっている顧客が誰なのかを、SIPベースのシステムを使うことによってリアルタイムに認識できる点が最大のメリットだ。いわゆる「プレゼンス機能」である。顧客を認識した上で、Yahoo!側からその顧客に対して、VoIPあるいはチャットを利用してコンタクトを取ることができる。顧客サービスに双方向性が加えられるため、顧客満足度を引き上げるためのさまざまな施策を実行することが可能になってくる。

 同氏は「特にIMのプレゼンス機能を重視している。今年の後半から有料サービスとして提供しようと思っている」と話した。

 こうした取り組みを支えるのも、顧客のニーズに応じて適切な顧客対応エージェントに振り分けるGenesysのルーティング機能だ。また、将来的には、チャットで顧客が投げ掛けた質問に対してチャット上で自動応答する「自動チャットサービス」の提供も視野にいれているという。

 これらの取り組みは、3億4000万という膨大な無料ユーザーをケアしなくてはいけない企業が、いかに効率よくサポート体制を構築するかを考える上で参考になる事例だ。

CRMシステムを再構築

 Yahoo!は3年前にCRMシステムを導入したが、実際にはそれを使いこなすだけの予算がなかったという。だが、e-コマースのビジネスがアジアで急伸したことなど経営環境の変化により、本腰を入れてCRMを見直す必要に迫られたという。

 要件は、グローバルでビジネスを展開している同社の中での「境界線」をなくすこと、また、トランザクションのコントロール、柔軟性、拡張性も重要な要素だった。その要件を考えた上で、「まったくエラーのないシステムを構築しなくてはならなかった。結果としてGenesysをベースにしたコンタクトセンターを構築する以外に選択肢はなかった」とウィットクラフト氏は話している。

導入効果

 Yahoo!におけるGenesys製品の導入効果は、何よりも無料提供しているIMサービスやPCから電話を掛けられる通話サービスを十分に活用するための環境を整えることができたことだという。また、コンタクトセンターで対応するエージェントの労働生産性も10〜15%向上した。

 また、GenesysのIVR機能であるGVPへの投資コストはわずか2年で回収することができた。ちなみに、同社はIVRサービスを一度はアウトソースしたが、応答メッセージの変更などを柔軟に行うと結局は「アウトソースは高く付く」ことに気づき、現在はインハウスでIVRを運用している。

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