シンクライアント導入例――NTTデータにおけるSun Rayの試行導入例シンクライアントの真価を問う(1/2 ページ)

ここまでの記事で、シンクライアント導入時の留意点などを紹介してきた。最後に、筆者の勤務先における実導入の経験を紹介したい。

» 2006年06月28日 11時30分 公開
[宮本久仁男,ITmedia]

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 ここまでの記事で、シンクライアントの実現方式とその特徴、導入時の留意点などを紹介してきた。最後に、筆者の勤務先(NTTデータ システム方式技術ビジネスユニット)における試行導入の経験を踏まえ、その狙いとポイントを紹介したい。なお、試行導入とはいっても、現状で100人以上のユーザーを抱えており、ひとたびトラブルが発生すると業務に大きな影響が発生する環境だ。

Sun Ray導入のメリット

 筆者の勤務先では、システム基盤に関する各種ソリューションの開発や検証を行っている。UNIXやWindowsなどのいわゆる「オープン系」と称されるプラットフォームに、DBMSやアプリケーションサーバなどの各種ミドルウェアやネットワーク機器、ストレージ機器などの装置を組み合わせ、機能や性能、そして信頼性に関連した検証を通じて、コストパフォーマンスが最適なものをシステム開発のために提供する、という役目を担っているわけだ。

 こうしたソリューションは、どちらかというとサーバサイドのものが多いが、昨今の事情を勘案して、システム構成要素の1つとして「シンクライアント」が要求される例が増えている。そこで、筆者の勤務先でも必然的に取り組むようになった、というのが導入の経緯だ。

 なおオフィスでは以前から社員証がICカード化されていた。そのICカードを利用して、端末ログイン時にユーザー認証を行う。その上でさらに、画面上で認証を実施している。したがって、ICカード→Sun Ray認証→Windows認証という三段階の認証を経ない限り端末は利用できない。

Sun Ray認証 画面下部のスロットにICカードを差し込むことでユーザー認証を行う

 いくつかある選択肢の中からSun Rayを選んだ理由は、非常にシンプルだ。

 端末としてPCを選ぶという選択肢も当然あったが、すでに各社がPCをシンクライアント端末化するソリューションを開発、展開しており新味に欠ける。一方、専用ハードウェアのみが端末となりうるSun Rayは、素材としては面白い。しかも、これをシンクライアントソリューションの要素の1つとして採用しているものはあまりない。

 さらに、その向こうに存在するミドルウェアや環境によってどのようにも化けうる可能性がある。

 何より、すでにあるICカード社員証を用いることで、「社員を特定しての認証」が実現できる。しかも、いったん認証を済ませてしまえば、その後の利便性は高い。端末に挿入したICカードを抜いて、別の場所にある別の端末に差しても同じ環境を利用できるからだ。オフィスの中にはSun Ray端末を設置してある会議室もあるが、そこにユーザーそれぞれのデスクトップを映し出すことができるため、PCを持ち歩くわずらわしさもないし、PCを常設しておくことによるリスクも低減できる。

導入後に直面した課題

 とはいえ筆者のケースでも、決して順風満帆というわけではなく、導入当初は試行錯誤の日々が続いた。中でも大きかったのは「自分がPCで使っていたキーボード」をそのまま使うための試行錯誤である。

 筆者の勤務先では、大まかに以下のような構成でSun Rayを用いたシンクライアントシステムを運用している。実際には、WTS以外にVMWareによる仮想ブレード構成も準備し、必要なユーザーに割り当てている。

筆者の環境 図●筆者の勤務先におけるシンクライアント環境

ここで、Sun Ray端末に接続されるキーボードのキー配置が、Sun Rayサーバが想定しているものと異なっており、その修正作業に追われた。

 具体的にいうと、Sun Ray端末に映し出される画面は、Sun Rayサーバ上に割り出される仮想画面なのだが、この仮想画面はX Window Systemによって作り出されている。このため、Sun Rayサーバ上のキーマップ変更を行う必要があった。

 このように変更を加えると、今度は、異なる種類のキーボードが接続されているほかの端末を使う場合にキーマップが変わってしまうという欠点がある。しかし筆者の場合、ほかの端末を使うのは、打ち合わせなどで資料を映し出したりするような場合に限られるため、大きな問題は出ていない。どうしても困るようであれば、キーボードそのものをSun Rayサーバが対応しているものに変更してしまえば問題は解決される。

 また、以前の記事で少し触れたが、FlashのプラグインがNAS上にユーザープロファイルを格納したディレクトリの場所を認識せず、動作しないという問題もあった。

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