OfficeならERPも簡単?  ――SAPとMSが試みる基幹システムの発想転換

SAPジャパンとマイクロソフトは8月7日、SAPのERP製品を、マイクロソフトのOffice製品のインタフェースから効率的に操作する新たな製品「Duet」を、主要ユーザーに紹介するセミナーを都内で開催した。

» 2006年08月07日 19時48分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンとマイクロソフトは8月7日、SAPのERP製品を、マイクロソフトのOffice製品のインタフェースから効率的に操作する新たな製品「Duet」を、主要ユーザーに紹介するセミナーを都内で開催した。

 1993年に米Microsoftのビルゲイツ氏と、SAPの前CEOであるハッソ・プラットナー氏の間で交わされた合意以来、両社のパートナーシップは長きにわたり、一時は合併するとの憶測が流れたこともあった。そんな両社が初の共同開発製品として、2005年4月にコードネーム「Mendocino」を発表。その実製品版が2006年6月に英語版が発表されたDuetである。

Duetについて説明するSAPのシニアバイスプレジデント、ウド・ワイベル氏

 Duetのコンセプトは「SAPの業務アプリケーションに、マイクロソフトのOffice製品からアクセスできるようにすること」である。Outlook ExpressやExcelなどのOffice製品からERPを操作できるようにすることで、プロジェクトの進捗記録の履歴管理や追跡、休日/休暇の申請と承認業務や採用管理の合理化、出張計画、販売契約、購買管理などの業務の簡素化を図ることができる。

 また、この日は、Duetの今後のロードマップとして、特定のシナリオ別の業務をサポートする「バリューパック」を提供することが紹介されている。

 従業員とマネジャー向けのパッケージであるバリューパック1は、採用管理、出張計画、レポート分析などの業務の合理化を可能にするもの。ERP 2005やBWをはじめ、採用管理ではeRecruiting 6.0とOfficeが連携する。一方、バリューパック2では、よりビジネスにフォーカスした業務をサポートする。販売管理ではCRM 4.0、購買管理ではSRM 5.0といったSAP製品とOfficeが連携することになる。両製品とも、年末までに日本語版がリリースされる計画だ。

 米国では既にユーザー企業も多く、コンサルティング企業のEDS、Deutsche Post、InfosysなどがDuetを導入。OfficeというPCのユーザー全般になじみのあるソフトウェアをインタフェースに採用することによって、敷居の高いイメージのあるERP製品を多くのユーザーが使い、業務の生産性向上を実現しているという。

 マーケティングや営業活動は共同でやるものの、ユーザーは必要に応じてSAPとマイクロソフトのどちらからも製品を購入することが可能となっている。

 この日は、協業のテーマである、フロントシステムと基幹系システムの統合について、フロンティアワンの鍋野敬一郎氏が講演した。同氏は、「従来の基幹システムは特に、電子メール、携帯電話、Excelなどの製品との連携がうまくいっていなかった。だが、内部統制の時代になり、電子メールには“証拠物件”との位置が加えられるため、今後はコンプライアンスの観点からもDuetのような製品が注目される可能性は高い」と話した。

鍋野氏

 鍋野氏はさらに、今後の基幹システムの在り方について、「管理するシステムの数が少ない方が楽なのは間違いない。内部統制などへの対応についても、ERPの適用範囲を広げる一方で、Officeをインタフェースとすることで、履歴管理やセキュリティ対策などをカバーできる可能性も高い。その場合、さまざまなツールを導入するよりもコストは低く済む。だが、そのためには、企業のだれもがERPを使えるようにライセンス体系が必要になる」と述べている。

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