ここまで変わるVista/Longhornのネットワーク、残る課題は?(1/5 ページ)

Windows VistaおよびLonghorn Serverではネットワークコンポーネントが大幅に変更される。パフォーマンス、セキュリティ、管理性が向上する見込みだが、一方で、ネットワーク機器を検出し、グラフィカルに表現する主要機能“ネットワークマップ”はさらに改良が必要だ。

» 2006年08月17日 07時00分 公開
[Michael Cherry,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Windows VistaおよびWindows Longhorn Serverでは、ネットワークコンポーネントが大幅に変更される。例えば、TCP/IPおよびServer Message Block(SMB)プロトコルスタックは、Windowsのネットワーク機能のパフォーマンス、セキュリティ、管理性の向上を図り、完全にデザインが変更される。

 ほとんどのネットワーク関連の変更はOSの深いところで行われるが、Windows Vistaではネットワークリソースの検出と管理を簡素化するために、ユーザーインタフェースも大幅に変更される。

 また、ハードウェアによるパフォーマンス強化など、Vista/Longhornにおけるネットワーク関連の一部の変更は、Windows Server 2003向けにも提供される予定だ。ただし、これらの新しい機能を利用するには、ハイエンドのネットワークハードウェアが新たに必要になるかもしれない。

オフロードでパフォーマンスを向上

 ネットワークパフォーマンスの向上を目的とした変更としては、TCP/IPプロトコルスタックのネットワークパケットの送受信方法が改良されたことと、特殊なハードウェアにネットワーク関連の処理をオフロードする機能がサポートされるようになったことが挙げられる。

Compound TCP
 新しいTCPプロトコルスタックは、Microsoft Researchが開発したCompound TCP(CTCP)を採用している。これにより、帯域の遅延、遅延の変動、パケットロスを監視して、1度に送信できるデータ量の増大を図っている。

TCP受信ウインドウの自動調整
 受信コンピュータ側の新しいTCPプロトコルスタックは、ネットワーク遅延(“待ち時間”と呼ばれる)とアプリケーションの取得レートを常時監視し、自動的に受信ウインドウ(受信データ用のメモリバッファ)を最適化する。これにより、WAN接続やインターネットにおけるTCPのパフォーマンスが大幅に向上する。特に新しいSMBプロトコルと合わせて活用することで、高い効果が期待できる。

ハードウェアへのTCP処理のオフロード
 VistaでもLonghorn Server(2007年後半にリリース予定の次期Windows Serverのコード名)でも、TCP Chimney Offloadがサポートされる。これは、TCPオフロードエンジン(TOE)を備えた特殊なネットワークアダプタにパケットの分割や復元などのTCPパケットの処理をオフロードするテクノロジーだ。

 Webサーバやファイルサーバ、ストレージサーバへの接続など、長時間セッションが維持される大量のデータを転送する接続の場合は、ネットワークパケットの処理が高速化されるだけでなく、サーバやワークステーションのメインプロセッサリソースを他のアプリケーションが利用できるように解放する。

 このハードウェアオフロード機能は、Windows Server 2003用にも2006年5月にリリースされたScalable Networking Packによって提供されている。

Receive-side Scaling(受信側負荷分散)
 Receive-side Scaling機能は、受信トラフィックを利用可能なすべてのプロセッサまたはプロセッサコアに動的に分散し、受信トラフィックの多いWebサーバやファイルサーバ、ワークステーションのパフォーマンスを大幅に改善する。

 これまでのバージョンのWindowsでは、他のプロセッサやコアが空いていても、受信トラフィックはすべて1つのプロセッサコアにバインドされていた。ワークステーションやデスクトップにも普通にマルチコアCPUが搭載されるようになってきたことで、負荷全体をすべての利用可能な処理リソースに分散できる機能は、重要性を増してきている。Receive-side Scalingも、Scalable Networking Packの下でWindows Server 2003用のサポートが提供されている。

Server Message Block(SMB)2.0
 ファイルやプリンタの共有に使われる既存のSMB 1.0プロトコルは、現在のネットワークには当てはまらない状況を基に開発されている。また、いくつかの新しい機能をサポートするためにわずかな変更や調整が行われているだけで、当初のデザインからほとんど変わっていない。

 Windows VistaおよびLonghorn Serverには、SMBの新しいバージョンが搭載される予定である。新バージョンでは、複合操作をサポートすることで1操作あたりのラウンドトリップとオーバーヘッドの削減が図られているほか、バッファサイズも拡大できる。また、1サーバ上で同時に開くことができるファイルハンドル数やシェア数など、いくつかのリソースの制限を緩和することで、拡張性を高めている。

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