以上、3つのソリューションを紹介したが、それぞれの得意/不得意を整理してみよう。可用性を縦軸に、カバー可能なサービスレベルを横軸にとって、各ソリューションがどのようにマッピングされるかを図3に示したので参考にしてほしい。
併せて、これらストレージのディザスタリカバリシステムに関わるコストについて考察したいと思う。
ディザスタリカバリに限らず、ITシステムの費用はその規模や目的、構成によって大きく変動するため、一言でまとめるのは困難だ。ただ、当たり前のことではあるが、高可用性が求められるシステムになればなるほど、そのサービスレベル確保のため、比例してコストも高くなる傾向を示す。
もう1つ注意が必要なことがある。ディザスタリカバリシステムについては、構築時に一時的な初期導入費用を計上すればすむというものではない。維持管理やシステム改善のためのコストについても考える必要がある。事実、その維持/管理には多くのコストが発生するため、適切な初期費用と継続費用の双方の計上を考慮しておかないと、後で「こんなはずではなかった……」と嘆くことになるだろう。
なおソリューションベンダーの中には、ディザスタリカバリシステムの費用対効果を測定し、アセスメントの実施とさらなる改善を支援するサービスを用意しているところもある。実際、筆者が所属しているベンダーにもROIツールが存在し、アセスメントに適用された実例がある。
昨今ストレージの世界では、ILM(Information Lifecycle Management)というアプローチに基づくデータマネジメントが注目を集め、ストレージベンダーが競っていろいろな形のソリューションを提供している。
ILMとは、重要度や利用目的/頻度などの変化に応じて、格納に適したストレージへ適宜、データを移動、配置するというコンセプトだ。この結果、すべてのデータを画一的に保存する場合に比べ、効果的な情報活用と効率的なストレージ投資が実現できる。
ディザスタリカバリシステム構築に合わせて、このILMを実践する企業が、規模の大小を問わず増えてきている。ビジネスに必要なデータの管理にILMを適用し、そのプロセスを通じて明確になったディザスタリカバリが必要なデータに対し、優先的にIT投資を行う、といった感じのアプローチだ。どのデータがどういった観点でどのくらい重要なのか明確にするというこの手法は、近年、コンプライアンスソリューションとしても注目を集めている。
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