GPLv3の策定プロセス:公開の審議と非公開の起案(1/2 ページ)

2007年には登場する予定のGPLv3。しかしその策定プロセスがどのように進められているかについて注意を払っている人は少ない。ここでは、GPLv3の策定プロセスについて再度確認してみよう。

» 2006年08月30日 07時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 GNU General Public Licenseバージョン3(GPLv3)の策定はどのようにして行われているのだろうか。今回の改訂内容とその成否がフリーおよびオープンソースソフトウェア(FLOSS)コミュニティーに与える影響の大きさを考えると、この質問はGPLv3最終版の内容そのものとほぼ同じくらい重要である。にもかかわらず、今のところその答えはほとんど明かされていない。

 GPLv3の策定プロセスについての唯一の公開情報は2006年1月にリリースされたプロセス定義(Process Definition)の文書であるが、間接的にはどんな情報であれGPLv3サイトの残り部分から収集できる。現在はドラフト第2版への反応が次々に寄せられるとともにドラフト第3版の起草が始まっており、より完成度の高い答えが明らかになりつつある。NewsForgeはGPLv3の策定プロセスに携わる人々の何人かに話を聞いた。特にSoftware Freedom Law Center(SFLC)の弁護士でGPLv3の主だった起草者の1人でもあるリチャード・フォンタナ氏から彼自身の見解を聞くことができた。クライアントであるリチャード・ストールマン氏とFree Software Foundation(FSF)への配慮という弁護士としての職業的倫理観による縛りがあることを認めながらも、彼の発言はGPLv3の策定プロセスを初めて明らかにする内容となっている。フォンタナ氏の説明によると、このプロセスでは、法的文書に対するものとしては前例のない審議に続いて、ごく少数の専門家による濃密な取り組みを通じて各コミュニティー間の合意形成が期待できるような文面が作成されるという。

意見の収集

 フォンタナ氏は「公式な形と非公式な形」を織り混ぜた、意見の収集方法についてまず説明してくれた。GPLv3のWebページでは、現時点のドラフトに対するコメントを閲覧し、自分のコメントを登録することができる。フォンタナ氏によると、こうしたコメントは「きわめて入念かつ体系的に」分析されるそうだ。

 またときにはもっと非公式な形で意見が集められることもある。例えば4月にブラジルで行われたGPLv3カンファレンスでは、ある発表を聞いたフォンタナ氏がその後で発表者に意見の詳細を聞きに行ったという。

 しかし、非公式な意見の多くは策定プロセスの実行開始時に組織された4つのディスカッション・コミッティーから寄せられたものだ。4つのコミッティーは130名以上のFLOSSコミュニティーのメンバーで構成されており、その立場によって大まかに次のように分かれている。

  • コミッティーA:Perl、Apache、GNOMEといった主要なフリーソフトウェアプロジェクトの代表者から成る。
  • コミッティーB:MySQL、Cisco Systems、Novell、IBM、Red HatのようなGPLソフトウェアの主要なディストリビュータの代表者から成る。こうしたディストリビュータの多くは主要な特許保持者であり、特許法の専門知識を有している。
  • コミッティーC:各企業、大学、行政機関など、フリーソフトウェアを利用している主要な組織の代表者から成るが、その大半は米国の組織である。また、このコミッティーにはソフトウェアを取り巻く法律および政策の問題についての専門家も含まれる。
  • コミッティーD:「Debianのドン・アームストロング氏やベンジャミン・マコヒル氏や、OpenOffice.orgのルイス・スアレスポッツ氏など、知識派ハッカー」とフォンタナ氏が呼ぶメンバーらの集まり。

 「4つのコミッティーはどれも完全に統制された組織ではない」とフォンタナ氏は話している。コミッティーの編成は、GPLに対する各種コミュニティーおよび関係者層の利害関係が明らかになるように行われた。あつれきを生みかねない立場の相違にもかかわらず、各コミッティーはこれまでのところ「とてもうまく機能している」とフォンタナ氏は述べている。「これらのグループは、必ずしも一般に考えられているほどかけ離れた存在ではない。ときには、大企業からの参加者が多数いるコミッティーがフリーソフトウェアのハッカーで構成されるコミッティーと同様の懸念を示すこともあった」

 それぞれのコミッティーは独自の組織運営を行っており、メンバーが必要と考えるサブコミッティーが形成される。「コミッティーCでは実際にサブコミッティーが形成されている。現在、われわれは、取りわけDRMや特許のような難しい問題についてコミッティー同士が容易に対話できる方法を模索している」とフォンタナ氏は語る。

 ほかのコミッティーや個人のメンバーは、新しいメンバーの募集ほか、別のコミッティーの監査役としての働きも担っている。例えば、ベンジャミン・マコヒル氏は次のように語っている。「たぶん6人ほどからアプローチがあった。彼らの多くは解決したい問題を抱えていて、わたしはコメントの保存に協力した。ほかの何人かは委員会への参加を望んでいたが、それも実現できた」

 チームとして、また個人としても、コミッティーのメンバーは問題を提起し、起草者との協議を行う。ドラフト第2版の策定プロセスには「悠長なことに」何週間もかかっていたが、ドラフト公開の期限が迫ると、起草者らはコミッティーに対して「最初のフェーズ中に作業を終え、明確になった問題をわれわれが検討できるように伝えてもらいたい」との要請を行った、とフォンタナ氏は述べている。

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