Microsoftの新体制は今どうなっているのか?――コンシューマー分野編(1/3 ページ)

Microsoftはオンラインサービスから撤退することも、Yahoo!などの大手競合を獲得することもしないが、利益を生むビジネスになるまで投資を続けることを明言している。また、Xbox事業は2008年度には黒字化が見込めるが、Zuneは当面赤字でのスタートになる。

» 2006年09月11日 07時00分 公開
[Matt Rosoff ,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 高い経費と低い利益率――オンラインサービスおよびホームエンターテインメント分野での事業拡大に努めるMicrosoftの業績の特徴を表すパターンとなるだろう。

オンラインサービス部門:変遷期を勝ち抜くための大変革

 MSNを前身とする新しいオンラインサービス部門は、大変革の渦中にある。新しいWindows Liveブランドの下で多数のMSNサービスのデザイン変更を進めると同時に、新サービスの開発も進行している。そして、売り上げの面から最も重要なのは、検索連動型広告(検索結果画面に表示される広告の表示権を広告主が入札するタイプの広告)用とシンジケート広告(サードパーティのサイトに広告を配信し、広告の配信元と配信先のサイトとで収益を分配するタイプの広告)用の新しいプラットフォームの開発が進んでいることだ。

 この変革の一環として、David Cole氏やYusuf Mehdi氏など旧MSNの指揮官たちは新しいポジションに移動し、代わってKevin Johnson氏、上級副社長のSteve Sinofsky氏(Windowsクライアント事業の一部も監督)およびSteve Berkowitz氏(第4位の検索サイト米Ask.comの前CEO)、そして副社長のBlake Irving氏(これまでのMSN事業部での役割を拡大)が指揮をとることになった。

 しかしこの変革は、2006年度のMSN事業部の業績を圧迫し、収益は3%のマイナス成長となり、2003年度以来初めての赤字を喫した。Microsoftでは、2007年度は総じて7〜11%の増収となり、同年度後半には再びプラス成長に転じると見ている。ただし、オンライン事業の赤字は続く見込みだ。また、黒字に転換できると予想される時期は明示されていない。これは、オンライン市場でのライバルの好調な業績を考えると、特に注目される。例えば、Googleの2006年6月決済の4半期の収益成長率は前年比で70%であり、利益としては2倍以上の増益を記録している。

 このような厳しい財務実績にもかかわらず、Microsoftの年次会議Financial Analyst Meeting(FAM)では幹部数名が同社のオンラインサービスへの注力を繰り返し表明している。CEOのSteve Ballmer氏は、Microsoftはオンラインサービスから撤退することも、Yahoo!などの大手競合を獲得することもしないが、成長し利益を生むビジネスになるまで投資を続けると明言している。チーフソフトウェアアーキテクトのRay Ozzie氏は、どのようにしてオンラインサービスがMicrosoftの従来のソフトウェアビジネスモデルを浸食し得るかについて時間をかけて説明し、この変遷期を勝ち抜くためには、オンライン分野で積極的に戦う必要があると述べている。

 Johnson氏はオンライン事業についての話の中で、ユーザーのメディア利用時間の15〜20%はオンラインが占めているにもからわらず、オンライン広告には広告予算全体の5%しか使われていないことを指摘している。Microsoftではこの不整合は将来自然に是正され、オンライン広告への莫大な資金の流入が発生すると見ている。しかし、この市場の成長の恩恵を受けるには、オンラインサービスの質を高め、ターゲット広告を配信できるようにする必要があるとしている。

 Johnson氏はこれらの目標達成の具体的な戦略については明言を避けたが、おそらく次の3つのアプローチに集約されるだろう。

人気のあるオンラインサービスからユーザーを誘導
 アクセス数は高いが広告収入をほとんど生まないサービス(Mail、Messenger、Spacesなど)や、人気のあるMicrosoftソフトウェア製品(WindowsやOfficeなど)から、広告ビジネスモデルが確立されているがアクセスの少ないMicrosoftのサービス(特にSearch)へとユーザーを誘導する。

小中規模企業向けのシステムを構築
 小中規模企業が検索連動型広告(AdCenter)やシンジケート広告(AdExpert)を利用できるようなシステムを構築する。また、このシステムでは、ユーザー追跡機能や人口統計に基づくターゲティングなど技術面で競合をはるかにしのぐテクノロジーを提供できるようにする。

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