ポッドキャスティング、企業で成功(1/3 ページ)

米国企業のIT幹部の多くは、ポッドキャスティング戦略を持っていないか、ポッドキャスティングにはあまり関与していないという。一方で、さまざまな企業がポッドキャスティングをコミュニケーションやマーケティングの手段として利用している事実もある。

» 2006年10月06日 16時32分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

 MassMutual Financial Group、General Motors、A.M. Best、IBMといった企業から配信されている企業ポッドキャストは、FitPod.comが提供しているエクササイズ用音楽、Bill Maherのコメディー、Apple ComputerのiTunesストアの人気リストにあるスポーツ放送などと競合する可能性はなさそうだ。しかし企業ポッドキャスティングは、ビジネスの技術基盤への進出を果たしたようだ。

 デジタル音楽プレーヤーへの配信用として制作されるオーディオコンテンツであるポッドキャストのアドバンテージは明白だ。簡単に制作することができ、可搬性があること、そしてユーザーはそれらをダウンロードし、オフィスの同僚の仕事を邪魔することなく、暇なときに聴くことができることである。上司からのメッセージであれ、新製品に関する情報であれ、新しいビジネスプロセスの手順であれ、技術サポートに関するTipsであれ、何でもダウンロードして聴くことができるのだ。

 「次の熱狂時代の主役はiPodと携帯電話だ」――Max D. Hopper Associatesのマックス・ホッパー社長は、先ごろダラスで開催されたSociety for Information Management主催の「SIMposium」カンファレンスでそう語った。「人々はコンシューマー技術を使うのに慣れている。顧客はそれと同じ気軽さでサプライヤーと付き合いたいと思うようになり、企業もその要求に対応しなければならなくなるだろう」。

 ポッドキャスティングはIT幹部に難問を課しており、米国eWEEK編集部が話を聞いたIT幹部の多くは、ポッドキャスティング戦略を持っていないか、ポッドキャスティングにはあまり関与していないと答えていた。今のところ、ポッドキャスティングの取り組みで主導権を握っているのは、マーケティング部門や販売部門といったビジネス部門である。これらの部門では、独自にシステムを構築したり、あるいはIT部門と相談することなしに必要なシステムを購入したりしているようだ。

 こういった慣行は、ポッドキャスティングの普及拡大に伴って変わらざるを得ないかもしれない。これらの比較的新しい技術(WikiやRSSフィードなども含む)については、コンシューマー技術が企業のIT部門に与える影響を検証するeWEEKの連載記事で取り上げる予定だ。

 簡単に言えば、コンシューマーがIT分野の専門家らをリードしているのである。実際、ユーザーはポッドキャスティングを既に使いこなしており、その能力は急速に高まりつつある。The Diffusion Group(TDG)によると、米国のコンシューマーの間でのポッドキャスティングの利用は年率101%のペースで拡大する見込みだ。2010年までには5680万人の米国人が「タイムシフトしたデジタルオーディオファイル」(=ポッドキャスト)を利用するとTDGでは予測している。

 バラ色の予想ばかりではない。懐疑的な意見を述べる人もいる。カリフォルニア州フォスターシティーにあるForrester Researchのシャーリーン・リー氏は、「IM(インスタントメッセージング)のように、一夜にして爆発的に普及することはないだろう。(企業では)ポッドキャスティングはまだメインストリームから程遠い」と指摘する。

 そうだとしても、ポッドキャストに精通した若いスタッフが企業に入社するのに伴い、ITプロフェッショナルは選択を迫られることになる。ポッドキャスティングの侵入を阻止するか、それともMP3ファイルの流入に対して十分な帯域幅を用意したり、スタジオを設けたりして、このパレードを先導するかのどちらかである。

 ユーザーが主導する形で企業に導入される技術という意味では、ポッドキャスティングはPCやインターネットと共通点が多い。これらの技術と同様、企業は最初にROI(投資対効果)を算定せずにポッドキャスト導入プロジェクトを立ち上げているが、ポッドキャスティングがPCやインターネットに匹敵するインパクトをもたらすかどうかは不明だ。

 マサチューセッツ州スプリングフィールドにある保険会社、MassMutualのプロフェッショナル開発全国センターのディレクターを務めるデニーズ・シチェバック氏は、「これは情報配信手法の必然的な発展形態だ。当社で採用予定の人々の人口統計データを見て、ポッドキャスティングを検討した。それに、彼らは情報を受け取る方法としてiPodを利用したいと考えている」と話す。

 シチェバック氏によると、オーディオファイルをダウンロードしてPCで聴く人もいれば、オーディオファイルをCDに焼いて、帰宅途中などに聴く人もいるという。

 MassMutualでは研修用のオーディオやビデオの制作では長い経験があり、同社の4200人の保険代理人向けの研修教材の作成を担当するシチェバック氏は、教材をMP3ファイルに出力するだけでよかった。コンテンツはMassMutualのオンライン大学から提供されるのである。同社のオンライン大学では、保険代理人が情報や営業に関するアドバイスなどにアクセスして自習するのを支援している。各ポッドキャストは約3分間のニュースで始まり、その後にそれぞれ約3分間にまとめられた3つの学習コンテンツが続く。MassMutualのオンライン大学のWebサイトには、各ポッドキャストの学習テーマを示したリストが掲載されている。

 ポッドキャスティングに必要な人材を見つけるのも時間がかからなかった。シチェバック氏は、商用ラジオの経験があるスタッフ、デイブ・ブキャノン氏とプロデューサーのカレン・マクマーオン氏を共同で作業に当たらせた。ブキャノン氏は台本の作成とアナウンスを担当し、マクマーオン氏はコンテンツの企画とゲストの手配を担当する。両氏とも、シチェバック氏が統括するプロフェッショナル開発部門での通常業務にポッドキャスティング業務が追加される形となった。

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