クライアント、ビジネス部門は伸び悩むも、サーバとXboxが健闘、予想を上回る好成績を収めたMSの2007年度第1四半期

Microsoftの2007年度第1四半期は、好調なSQL ServerとXbox 360の販売により、前年同期比11%の収益成長と純益拡大を実現した。今期業績を受けて同社は2007年度予想を上方修正しているが、新製品の優待アップグレードプログラムに伴う繰り越し計上の実施を示唆している。

» 2006年11月27日 08時30分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftの2007会計年度第1四半期(2006年9月30日期末)の業績は、引き続きサーバ&ツール部門の安定した成長とXbox 360の出荷効率の良さが牽引材料となって、同社発表の予想を上回り、純益にして34億8000万ドル、売上高108億1000万ドルを記録した。同四半期の好調な業績を受けて、同社は2007年度の予想収益をわずかに上方修正している。ただし、リリースが予定されている製品の優待(値引き)アップグレードプログラムの実施に伴い、約15億ドル相当の収益を第2四半期から第3四半期に繰り延べる必要があることを発表している。

Microsoftの過去5四半期の財務状況 以下の表に、2006年第1四半期から2007年第1四半期までの主な財務指標を示す
2007年第1四半期 2006年7〜9月 2006年第4四半期 2006年4〜7月 2006年第3四半期 2006年1〜3月 2006年第2四半期 2005年10〜12月 2006年第1四半期 2005年7〜9月
売上高 $10.81 $11.80 $10.90 $11.84 $9.74
純益 $3.48 $2.83 $2.98 $3.65 $3.14
営業利益1 $4.47 $3.88 $3.89 $4.66 $4.05
1株当たり利益(ドル) $0.35 $0.28 $0.29 $0.34 $0.29
株式数(10億株) 10.01 10.26 10.42 10.64 10.77
純益(対売上比率) 32.2% 24.0% 27.3% 30.9% 32.2%
売上原価(対売上比率) 15.7% 18.0% 18.6% 18.9% 12.9%
研究開発費(対売上比率) 16.5% 15.8% 14.8% 13.4% 15.6%
販売費(対売上比率) 20.3% 23.9% 21.7% 22.7% 20.0%
一般管理費(対売上比率) 6.1% 9.4% 9.2% 5.6% 10.1%
現金 $31.8 $34.2 $34.8 $34.7 $40.1
前受収益 $10.10 $10.90 $8.90 $8.83 $8.81
単位:特記以外10億ドル
*1 営業利益は、通常の業務から得る収入から事業を行うための経常的な経費を差し引いたもの。純利益とは異なり、投資による損益や税金は含まない。ただし、訴訟和解費用は含んでいる。

絶好調のサーバとXboxが成長を牽引

 Microsoftの5事業部門のうち4部門は、同社が発表していた第1四半期の収益目標と同じかそれを上回る業績を残した。特にサーバ&ツール部門とエンターテインメント&デバイス部門は好調で強い成長を見せたが、クライアント部門はやや予想を下回る結果となった。

事業部別の売上および損益 以下の表に2007年度第1四半期と前年度同四半期の事業部門別売上と損益を示す。右端の欄が2007年第1四半期の前年同期に対する売上変化率である。「企業全体その他」の欄は、法務費用、全般的なマーケティング費や管理費など、どの事業部門にも分類できない経費を表す。業績数字はすべて、米国の一般に構成妥当と認められている会計原則(GAAP)に従って報告されている。営業損益には、投資による損益や税金は含まない
事業部門 2007年第1四半期売上高 2007年第1四半期損益 2006年第1四半期売上高 2006年第1四半期損益 売上変化率
クライアント $3,303 $2,637 $3,161 $2,570 4%
ビジネス $3,425 $2,253 $3,283 $2,244 4%
サーバー&ツール $2,499 $827 $2,127 $608 17%
エンターテイメント&デバイス $1,030 ($96) $606 ($173) 70%
オンライン $539 ($136) $564 $68 -4%
企業全体その他 N/A ($1,011) N/A ($1,271) N/A
合計 $10,811 $4,474 $9,741 $4,046 11%
単位:100万ドル

サーバ&ツール部門 20006年度第1四半期比で17%増収の25億ドルを達成し、引き続きMicrosoftの成長の牽引役を担っている。Microsoftでは14%〜の成長を予想していたが、これを大幅に上回る結果となった。ここ最近の数半期と同様に、この高い成長率は主にSQL Serverの販売によるもので、同製品の売上は前年同期比で30%拡大している。Microsoftでは、第2四半期の同部門の成長はやや抑えられて14〜15%になるものと予測している。

Windowsクライアント部門 Microsoft事業部の中で利益率の最も高いクライアント部門の前年同期比収益成長率は、同社予想の5〜6%を下回る4%となり、今期売上高は33億ドルにとどまった。業界全体ではPC販売が11%拡大しているが、同部門最大の収益源であるOEM販売による収益は4%しか伸びていない。Microsoftではこの成長率の不一致は、新興市場でのPCの普及が進んでいることと(新興市場では海賊版の利用率が高いうえ、MicrosoftはOS製品の価格を低めに設定している)、コンシューマー市場での販売が比較的好調である(コンシューマー向けWindowsは企業ユーザー向けのエディションに比べて価格が低い)ことが原因であるとしている。またこれには、Windows XPからWindows Vistaへの優待(値引き)アップグレードを提供するプログラムの開始に伴い、4500万ドル相当の収益を第1四半期で計上せず、第3四半期に繰り延べていることも多少影響している。なお、同プログラムの影響は第2四半期の方が大きく、クライアント部門の第2四半期中の収益10億ドル相当が第3四半期に繰り越し計上される見込みである。またMicrosoftは、同部門ではVistaのリリースが完了している2007年度の下半期に、高い前年比成長率を期待できるとしている。

ビジネス部門 Microsoftの事業部のうち総収益高が最も高い同部門は伸び悩み、前年比4%の増収で34億2000万ドルにとどまった。Office Systemラインの全製品とExchange Serverは、次の四半期にメジャーアップグレードが予定されている。多くの企業では、これら新版のリリースを待つか、エンタープライズアグリーメント(EA)やソフトウェアアシュアランス(SA)など複数年のライセンスプログラムにより既にアップグレード権を購入している(これらのプログラムによる前受収益は、2006年度第4四半期に20億ドル近く拡大している)。Microsoftでは、Office新版へのアップグレードを保証するプログラムの影響を考慮し、収益5億ドル相当を第2四半期から第3四半期に繰り越し計上することになると予想している。

エンターテイメント&デバイス部門 同部門では、Microsoftの予想成長率60%〜を大幅に上回り前年比70%の増収となり、10億3000万ドルを達成した。この好調な業績により、前年同期に1億7300万ドルあった赤字が9600万ドルにまで縮小され、2008会計年度までに黒字に転換するという公約に向けて同部門は着実に歩を進めている。この第1四半期でのXbox 360コンソールの販売台数は約90万台に上り、インストールベースは総計で600万を超えている。

オンライン部門 同部門の売上は、同社予想の最低ラインであった前年同期比マイナス4%の5億3900万ドルとなった。Microsoftでは、ここ数四半期と同様に、検索連動型広告エンジンをOverture(Yahoo!の1部門)からMicrosoft独自のadCenterに移行したことを理由に挙げている。つまり、Overtureに比べてadCenterの広告主数は少ないため、検索連動型広告をアウトソースしていた時期に比べて1検索あたりの収益が目減りしていることが原因であるという。ただし、財務最高責任者(CFO)のクリス・リッデル氏によると、1検索あたりの収益はほぼ以前の水準に達しており、オンライン部門の業績は徐々に回復を見せて第2四半期では前年同期比で3〜5%拡大するとしている。しかし、Windows LiveやMSNの新サービスのリリースに伴うコストの増大が同部門の収益を圧迫して、同部門は赤字を続けている。また、Microsoftは同部門が黒字に転換できる時期を示していない。

予想を上回る好成績を収めた2007年第1四半期

 予想を上回る収益成長のおかげで、Microsoftの今期の営業利益は42億ドルという同社予想の最高ラインを超えて44億7000万ドルに達した。純益も拡大し、1株当たり利益が予想の0.32ドルを上回る0.35ドルとなった。今四半期では、株式公開買付けにより200億ドル相当の自社株買い戻しを図りながら、公開買付け以外の買い戻しを含めても69億5000万ドル相当しか買い戻せなかったことを考えると、この純益の達成は特に印象的だ。予定通りに買い戻しが成功していたのなら、第1四半期の1株当たり利益はさらに1セント上昇していただろう。

 Microsoftの複数年ライセンス契約の販売業績の指標となる前受収益は、(多数の既存の複数年契約が更新時期を迎えた)前四半期に比べて、予想ほどは落ち込んでいない。第1四半期の前受収益は、前年同期比15%アップの101億ドルである。これは、多くの企業がOffice 2007やExchange 2007、Windows“Longhorn”Serverなど、今後登場する新製品の導入を考え、事前にアップグレード権を購入していることを示している。

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