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標準化と産業界のビミョウな関係

ニワトリが先かタマゴが先か。企業は、標準化前の技術を「事実上の標準」として普及させることで利益獲得を目指す。一方で標準化は、技術がもたらす利益を人類が享受するために欠かせない仕組みだ。
2006年11月29日 08時30分 更新

 日進月歩で新しい技術が誕生する一方、標準化のプロセスでは開発者や企業などの利害関係から策定までに時間がかかることがある。結果として、正式な標準化よりも先に「事実上の標準=デファクトスタンダード」となる技術も多い。11月28日のW3C(World Wide Web Consortium)のシンポジウムでは、Web技術の標準化と産業界のかかわりについて意見が交わされた。

 シンポジウムには、W3Cや他の標準化団体にも加盟する企業の代表者が参加。モデレーターとして松居真一氏(松下電器産業コーポレート R&D 戦略室)、パネリストに木達一仁氏(ミツエーリンクス執行役員)、村田真氏(日本IBM東京基礎研究所)、高木悟氏(YRPユビキタスネットワーキング研究所)、山上俊彦氏(ACCESS技術戦略企画本部)が出席した。

松居真一氏 松居真一氏(松下電器産業)

 まず、Webの標準化と産業界を取り巻く環境や、標準化プロセスにおける課題について意見が出された。

木達一仁氏 木達一仁氏(ミツエーリンクス)

 木達氏は、マークアップ言語やスタイルシートといったWeb標準技術がWebサービスに新しい流れを生んだと評価した。しかし、「企業などでの利活用は進んでおらず、今後は標準化団体とブラウザベンダーといったWeb関連企業との連携強化を図り、最新技術の相互理解を深めるべきだ」と述べた。

村田真氏 村田真氏(日本IBM東京基礎研究所)
高木悟氏 高木悟氏(YRPユビキタスネットワーキング研究所)

 村田氏は、「非英語圏の人間にとって英語の微妙な言い回しの理解が難しいように、標準化には参加者の言語や文化の違いが影響する」という。また、高木氏は「Webの世界は人間の本質を理解することが大切であり、企業の論理が先行すればWebの魅力が無くなる」と話す。

山上俊彦氏 山上俊彦氏(ACCESS)

 山上氏は、携帯電話でのフルブラウザの登場を例に挙げ、「かつては携帯電話のブラウザは軽量性が求められたが、今は機能対応が重視される。このように刻一刻と変わる技術環境の中でも、誰もが利用できる指針の策定にさらなる熱意をもって取り組んでほしい」と述べた。

 今後、標準化団体や加盟企業がとるべき行動に関して、木達氏はWeb 2.0のような参加者の集合知を活かすシステムの必要性を挙げ、「非英語圏の人間が意見を出しやすい環境を整備し、貪欲に吸い上げる仕組みを構築すべきだ」と述べた。

 村田氏は、「企業はより積極的に先進技術をプロダクトに実装していくべきだ」と語り、標準化はあくまで最低限の技術ルールであるとの考えを示した。一方で、「行き過ぎた技術競争を抑制するような発言力を必要」という。

 高木氏は、標準化までの長い時間の中で「何のために標準化するのかという本来の目的が見失われがちになる。失われることのない明確なビジョンを持つべきだ」としている。また、企業側についても「短期的な利益獲得に走り、標準化に関心が及ばなくなりつつある」との危機感を示した。

 山上氏は、標準化団体と産業界の連携不足を指摘する。「連携するにはタイミングが大切。機会を逃さないためにも両者がさらに歩み寄る姿勢を持つべきだと」と述べた。

 セッション後、会場からは「携帯電話ではWebからQRコード、絵文字に至るまでキャリアごとに仕様が異なる。開発者やサービス提供者には大きな負担であり、真っ先に標準化すべき分野ではないか」「標準化とは誰のために必要なのかという基本理念をしっかりと考えてもらいたい」といった意見が出された。

[國谷武史,ITmedia]

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