あらゆるシーンがショー化する? 日本SGIが空間ロボットを発表

日本SGIは、人間の音声や感情などによってIT機器や家電、什器などを自在に操作し、心地よい空間を演出する「空間ロボット RoomRender」を発表した。あなたの感情に沿った演出がなされる空間は、まさに人生劇場の様相だ。

» 2006年12月05日 20時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本SGIは12月5日、人間の音声や感情などによってIT機器や家電、什器などを直感的かつ自在に操作し、心地よい空間を演出する「空間ロボット RoomRender」を発表した。企業の会議室をはじめ、一般住宅、ホテル、福祉施設/介護施設などへの応用を計画している。

ITの追求ではなく、心地よさの追求

 同ソリューションは、日本SGIがAGIと共同で開発しているST(Sensibility Technology=感性制御技術)を核に、アドバンスト・メディアの音声認識技術「AmiVoice」など既存の技術を組み合わせ、システムコントローラーを経由した各種機器を音声で一括制御するとともに、感情に沿った空間演出を行うもの。同社はSTを基本エンジンとした感性ユーザーインタフェース「SUI」(Sensibility User Interface)の開発に取り組んでいるが、今回の空間ロボットプロジェクトは、“ヒトとロボットの心地よい関係をデザインする”をコンセプトに室内にある機械を空間の一部と捉えたSUIの具現化といえる。「インタフェースにおいては『声』が次のブレークポイントになると思う」(戦略事業推進本部執行役員本部長の大塚寛氏)

 空間ロボット RoomRenderを基盤とする空間演出の一例として、同社は社内会議室にデモ環境を構築。プロジェクタやスクリーンなどの各種AVシステムやブラインドなどを統合制御し、音声によって操作可能にした。これらはマクロ化することで、例えばプレゼンテーションモードなどのように定義することで、複数の機器を一括して制御可能。

 さらに、会議で交わされる人の音声から感情を分析し、雰囲気に応じたライティングを行う「FeelingWall」や、シーンに応じた香りや音楽を流すことで、アロマセラピーやカラーセラピーなどを考慮した空間演出を提供する。

 価格は個別相談となるケースが多いと思われるが、室内装備を除いた基本的なコンポーネントの価格は500〜600万円程度になるという。

 これら1つ1つの技術はすでに存在しているものだ。FeelingWallは、NECデザインやNECとの共同開発で誕生した「言花(KOTOHANA)」のコンセプトを応用したものであり、香りを出すシステムについては、映画館などでの応用事例も昨年あたりに登場している。

日本SGI戦略事業推進本部の池田曜司氏

 日本SGI戦略事業推進本部の池田曜司氏は、RoomRenderの今後について、感情に応じたエアコンディショニングの制御なども想定し得ると話す。また、正規総販売代理店として国内販売している立ち乗り電動二輪車「Segway」の活用も狙う。こちらもSDKが用意されているため、日本SGIでは音声でSegwayを手元に呼び寄せるなどの開発を進めていく。

STの“キモ”

 既存の音声認識では、入力された音声を文字情報に落とし込み、それを語彙のデータベースとパターンマッチングし、合致するものに対して、あらかじめ決められた反応を返すというプロセスが基本となっている。

 これに対してSTでは、“リズム”が重要な要素となっている。もっとも、ここでいう“リズム”は、単なるテンポを意味しているのではなく、声の抑揚やイントネーションまで含めて膨大なリズムのサンプルから感情を検出する関数を定義したもの。入力されたデータは関数化されることで感情認識を行っている。認識できる感情は、「喜び、怒り、哀しみ、平常、笑い、興奮」で、多感情同時認識も可能なため、「泣き笑い」などの一般には判断しにくいと思われる感情についてもカバーしている。その認識率は59〜65%で。池田氏によれば、人間の自然発話による感情認識率が60〜70%であることから、ほぼ同等のレベルに到達していると話す。

 2004年9月にはソフトウェア開発キット「ST SDK Ver2.0」もリリースされており、STをアプリケーションに組み込むことが可能。開発環境はWindows上のC++で、価格は105万円から。ランタイムライブラリとして用いる際のコストは別途相談となる。

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