共有する時代へ――Sun会長が講演

Sun Microsystemsのマクニーリー会長は、「デジタルデバイド解消や環境問題への対応は共有化がカギ」と語った。

» 2006年12月07日 09時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 12月6日〜8日まで東京ビッグサイトで開かれているNECのイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2006」の基調講演に、米Sun Microsystemsのスコット・マクニーリー会長が登壇した。冒頭、マクニーリ会長は「ネットワーク利用者が全世界で1週間に300万人ずつ増えている。しかし、NGNなどで盛り上がってばかりもいられない」と切り出した。

スコット・マクニーリー会長 スコット・マクニーリー会長

 マクニーリー会長によれば、ネットワーク利用者が拡大する一方で、人類の4人に3人はネットワークへ接続できない環境にあるという。「仮に全人類がネットワークへ接続できるようになったら、ネットワーク管理の負担は膨大なものになる」(マクニーリー会長)。

 そして先進国の都市部では、新規に設置するデータセンターの用地不足や、ネットワークの利用拡大に伴うサーバの増設が課題となる。設備規模の拡大は機器の発する熱量、また稼働と冷却のための電力量を増加させ、マクニーリー会長は「地球温暖化が加速する」と指摘した。

 デジタルデバイド解消のためにはネットワークの拡大が不可欠。だが、ネットワークを拡大させれば環境問題が深刻化する。この相反する課題を解決するキーワードが、「オープンソースに代表される共有化だ」とマクニーリー会長。

 オープンソースといえばアプリケーションの世界では一般的になりつつあるが、「データセンターを共有化する」というのがマクニーリー会長のアイデア。このアイデアをもとに「Blackbox」(関連記事)と呼ばれるプロジェクトを推進している。

Blackbox ビルの駐車場から奥地まで設置可能な「Blackbox」

 Blackboxプロジェクトとは、船便用コンテナの中にデータセンター設備を収容し、トラックに積載して運べばどこにでもデータセンターを設置できるというもの。企業は、Blackboxをレンタルすれば巨額の設備投資を行って自前のデータセンターを構築する必要がなく、設備更新の手間もなくなる。

 マクリーニー会長は、「災害時の仮復旧用設備として、最低限のインフラ(電源や幹線ネットワーク)があれば、地球上のどんな奥地でも早くて簡単にデータセンターを構築できる」という。求められるタイミングと場所、規模に合わせて移動可能なBlackboxを設置すれば、巨額のコストがかかるデータセンターをいくつも構築する必要性が減る。結果として、効率的なネットワークの拡大と環境への配慮が可能になるとしている。

 データセンターの事例以外にも、米国ではスーパーコンピュータを共有利用する「www.network.com」や教育機関のカリキュラムをWebで共有する「Curriki」といったサービスがある。

Curriki 教科書を購入して揃えると、小学校3年生では130ドルが必要になるという。Currikiは無償サービス。

 www.network.comは、スーパーコンピュータのCPUを1時間1ドルで使用できるというサービス。米国居住者以外は利用できないが、ハードウェア共有利用サービスの一例として知られる。Currikiは、小学校〜高校までのカリキュラムをWeb上で公開しており、自己学習をしたいという意欲的な希望者に好評を得ているという。

 最後にマクリーニー会長は、「IT社会の実現には消費電力の削減といった設備機器一つひとつの効率性を高める技術革新、そしてネットワークのインフラやサービスの共有化が大切。得意な領域を持つ企業同士が協力し合うことも共有化の一つだと」と述べた。

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