通信状態が目で見える安心――「可視光通信」次世代ITを支える日本の「研究室」(1/3 ページ)

屋内の照明機器、テレビ画面、そして街角の信号機、ネオンサイン――。身近にあるさまざまな光源が、そのまま通信デバイスとなる可視光通信。その実用化に向けたNECの取り組みを紹介する。

» 2006年12月08日 08時00分 公開
[沖山和也,ITmedia]

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無線通信のエポックを画する通信技術

 人の目で見える光「可視光」を伝送媒体として利用する、画期的な近距離無線通信技術の実用化が目前に迫っている。「可視光通信」である。

 可視光通信の歴史は意外に古い。かつて、軍用通信などでは、サーチライトなどの照明の点滅を符号化(モールス信号)することで、見通し距離にいる味方に対し情報伝達を行っていた(回光通信)。これらは人が視認、解読(復号)するため、単位時間当たりに送受信できる情報量には限度がある。最先端の可視光通信は、旧来の回光通信と同じ原理、光の点滅を利用する。その際、点滅の速度を人の目で認識できないほど速くすることで、圧倒的な大容量・高速通信が実現できる。可視光通信の光源は、高速点滅させる際の制御性に優れた発光ダイオード(LED)が最適とされている。

 この可視光通信が現在、近距離無線通信技術として大きな期待と注目を集めているのは、次のようなメリットあるためだ。

(1)システム構築が容易で低コスト化が可能

 光源(発信装置)として使われるLEDは、表示用のパイロットランプだけではなく、近年では白色LEDの登場とともに照明用途として普及が進みつつあり、近い将来、照明装置としての機能をそのままに、送信装置として兼用することができる。また、携帯電話などのデジタルカメラとして普及しているCCDイメージセンサーを受光素子として利用することも可能だ。つまり、既存のインフラを活用することによって、電波を伝送媒体とした近距離無線通信である無線LANなどと比べて送受信装置が簡素化できるため、システム構築時の低コスト化が期待できる。

(2)通信範囲が直感的に把握できるのでセキュリティ性が高い

 目に見える光を使うため通信範囲が視認しやすく、光の直進性を利用して、ピンポイントのターゲットに対しての通信も可能。また、カーテンなどで遮光するだけで通信を遮断できるので、無線LANなどの電波通信と比較して情報漏えいのリスクは圧倒的に小さい。

(3)人体、精密機器に対する安全性が高い

 可視光は人体にとって無害な波長領域なので、電波(無線LAN)、赤外線(IrDA)などと異なり照明機器で用いている高電力のまま送信することができる。また、精密電子機器への影響がないため、病院や実験施設など、従来、電波が使えなかった場所での利用も可能である。

(4)電波法の規制を受けず自由度の高い通信が可能

 300万MHz以下の周波数の電磁波を電波と定義した現行の電波法では、電波資源の公平かつ能率的な利用を確保するため、送信出力や周波数帯に応じた利用目的、無線局の設置基準、免許制度など、きめ細かな規制が定められている。可視光は電波法が規制する対象外の電磁波であるため、運用に際しては免許が不要であると同時に、フレキシブルな運用が可能である。

 これらの特長を持つ可視光通信の実用化と標準化を推進すべく、2003年11月には産学協同の可視光通信コンソーシアム(以下、VLCC)が発足した。

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