Vistaは躍進できるか「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(1/3 ページ)

かつて、これほどまでにマイクロソフトが生みの苦しみを味わった製品はないだろう。2006年11月、ようやくWindows Vistaの出荷が開始された。2007年に向けて、プラットフォームとしてのVistaは躍進できるのだろうか。

» 2006年12月26日 07時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 2006年11月30日、マイクロソフトがこの5年間歩んできた長い道のりに1つの到達地点が見えた。この日、同社の最新クライアントOSであるWindows Vistaの企業向けライセンス提供が開始された。

パッケージ 斬新なデザインのプラケースに入ったDVD-ROMで提供されるWindows Vista。左が企業向けの「ビジネス」エディション、右がフル機能入りの「アルティメット」エディション

 2001年のWindows XP以来、5年ぶりのリリースとなるWindows Vista。多くの新機能と新趣向のアピアランスを武器に、まさに満を持しての登場だ。だが、ここへたどり着くまでにはあまりに多くの出来事があった。マイクロソフト日本法人社長のダレン・ヒューストン氏は、11月30日に開かれた記者会見で「長い道のりだった」ともらした。5年ぶりという数字もさることながら、機能の面からもリリース時期の点でも、当初の予定とは大きく異なった製品となり、本当にようやく出荷にこぎつけたという感があるからだ。

11月30日の発表会場では、ダレン・ヒューストン社長自らがVistaのデモンストレーションを行った

Vista、開発スタート

 Vistaの開発スタートは、XPのリリース後、Windows Server 2003(当時の呼称はWindows .NET Server)の最終段階の開発と並行して行われたと思われる。当時はまだ「Longhorn」という開発コードネームのプロジェクトであり、Windows XPのリフレッシュ版という位置づけだった。その後、次世代のWindowsとして語られるようになったものの、既存のWindowsよりも強固なプラットフォーム基盤、刷新されたUI、Win32に代わる新たなAPIセット、強力なデスクトップ検索などといった漠然としたキーワードから、われわれはその姿を想像するしかなかった。だが、2002年10月に開発途中のバージョンがインターネット上にリークし、WinFSやサイドバーといった機能の一部を見ることができたという。

 翌2003年、Microsoftはそれまで2004年後半としていたリリース時期を大幅に見直し、2005年にずれ込むことを明らかにする。3月には初めてα版が披露され、続く5月の「Windows Hardware Engineering Conference5」(WinHEC)ではようやく一般の開発者に向けて公開が行われた。ところが10月、WinFSやセキュリティに関連する機能についてさらなる開発の遅れが明らかになり、出荷は2006年になることが濃厚となる。

 そして2004年4月と7月には、セキュリティを重視するXP SP2の開発優先による人員不足の余波を受けたとして、二度のVista β版リリース延期が明らかにされた。このとき、Windows開発の責任者だったジム・オールチン氏はビル・ゲイツ氏に対して、「開発を最初からやり直す必要がある」と告げたという。その結果、ソースコードの多くが廃棄された。

 ことの真偽はともかく、2004年8月には当初予定されていた機能をそぎ落とした「新しい」Longhornが発表された。

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