「人は城、人は石垣、人は堀」を想起させるLotus ConnectionsLotusphere 2007 Orlando Report

「人は城、人は石垣、人は堀」――武田信玄の言葉として知られるこの言葉は、現在の企業活動においてもあてはまるかもしれない。それを示そうとしているのが「Lotus Connections」である。

» 2007年01月26日 10時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 IBMが米フロリダ州オーランドで開催したユーザーカンファレンス「Lotusphere2007」において明らかにした企業向けソーシャルソフトウェア「Lotus Connections」と、コンテンツ共有ソフトウェア「Lotus Quickr」という注目の2製品。事前の予想では、「Hannover」のコードネームで呼ばれていたNotesの次期バージョンが目玉になると考えられていたが、ふたを開けてみれば、特にLotus Connectionsに時間が多く割かれた格好となった。IBM LotusのGMであるマイク・ローディン氏自ら、「過去最大の拡大」と評すように、常にコラボレーションのあるべき姿を追求してきたLotusがWeb 2.0時代においての立ち位置を明確に表明したという意味で今回の発表は大きな意味を持つ。

 この2製品のうち、Lotus Quickrは、NotesやMicrosoft Officeなどのアプリケーションのほか、「Lotus Domino」や「WebSphere Portal」などのリポジトリに接続するコンテンツ共有ソフトウェア。すでにこちらの記事で述べたように、機能自体はすでにLotus QuickPlaceやLotus Domino Document Managerで提供されていたもので、特に目新しいものではなく、それらをまとめて新たにパッケージングしたものであるため、ここではLotus Connectionsを中心に紹介する。

企業向けのソーシャルソフトウェアに求められるもの

 Lotus Connectionsは、「Profiles」「Dogear」「Communities」「Activities」「Blogs」といったオンラインツールを組み合わせた製品。このうち、説明が必要であろうものについて補足すると、「Dogear」がソーシャルブックマーク、「Communities」が一種のワークグループ、「Activities」がチームコラボレーションを管理するWebダッシュボードである。CommunitiesとActivitiesの違いは、Communitiesが同じ興味を持つ人間が集まって議論を交わすオープンな場であるのに対し、Activitiesは、特定のメンバーで議論を交わすだけでなく、そのために必要なファイルなどの情報共有ができるなど、アクティビティセントリックで情報を集約する場として機能する。

Activitiesの説明として示されたスライド

 各個のツールを見てみると、その多くはすでにオンライン上で提供されている。例えば、Dogearであればdel.icio.usやはてなブックマーク、ProfilesやCommunitiesはMySpaceやFacebook、mixi、Blogについては数多くのプロバイダーが存在する。誤解を恐れずに言えば、オンライン上のサービスを組み合わせることで、これらの機能は実現可能である。

 では、IBMは単にWeb 2.0の技術を取り入れただけなのかというともちろんそれに止まらない。IBMがLotusブランドで提供しようと考えているのは、ビジネスユーザー向けのコラボレーションツールである。Lotus Connectionsについては、各サービスをシームレス、IBMの言葉を借りれば「継ぎ目なく」統合していることもポイントだが、企業向けのソーシャルソフトウェアの意義をLotus Softwareの戦略担当シニアマネジャーでエバンジェリストでもあるアラン・レポフスキー氏は次のように説明する。

 「Gmailやdel.icio.us、MySpace、Facebook……挙げていくときりがないが、そうしたサービスを利用すれば、見た目上は(Lotus Connectionsと)同じものをユーザーは利用できるだろう。しかし、企業で利用するにあたって、サポートもその質もバラバラで、かつProfilesのような情報を公共の場にさらすことに問題は感じないだろうか。そうしたことを考え、サービスを統合しパッケージングして提供するのがLotus Connections」(レポフスキー氏)

「Googleで検索するより、IBMフェローのソーシャルブックマークの方が信頼に足る情報が多いよ」と笑うレポフスキー氏。「これは企業における新しい情報共有方法の台頭である」とも

 「これまでなら、下のフロアでどんな人が働いているかはもちろん、その人がどんな仕事に従事し、どんなことに興味があるのかなどはまったく分からなかった」と話すのは、IBM Software GroupでLotusブランドのWorkplace Portal & Collaboration Software戦略担当マネジャーであるダグラス・ヘインツマン氏。すでにIBM社内でもConnectionsの全コンポーネントが導入され、実際に利用されているというが、その利便性から利用率が特に高いのはProfilesであるという。

「ProfilesはLotus Connectionsの重要な基盤」とヘインツマン氏

 例えば、ある従業員がある新規事業を立ち上げようと考える。その人は、必要な技能を持つスペシャリストをProfilesの内容からタグなどで絞り込むなどして選抜することもできれば、DogearやBlogsから同様の志向や考えを持つ従業員の目星をつけることもできよう。さらに、同じような志を持つ従業員がすでにCommunitiesを立ち上げているかもしれない。そうしてプロジェクトのメンバーが固まれば、Activitiesでそれを進めていく……といったことがシームレスに行えるようになるわけだ。

 「人材を資産と考えるこのアプローチは、非常にエキサイティングな取り組みだ」とヘインツマン氏。「最終的に1つの目標に向かえば組織は関係ない」とも話す。従来のようなトップダウン型のピラミッド構造を逆転させんとするLotusの新機軸は、「人は城、人は石垣、人は堀」と語った武田信玄に通ずるものがあるが、人材にフォーカスを当てたコラボレーションの新機軸として企業にどの程度浸透するかが注目される。

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