MS、07年Q2業績はVistaとOfficeの売上繰り延べで低調な数字に

Microsoftの2007会計年度第2四半期(2006年12月31日期末)の売上高は、ホリデーシーズン中のXboxコンソールの販売急伸と引き続き好調なサーバ製品に支えられ、125億4000万ドルを記録した。ただし、主要製品の売上高の計上を来期に繰り延べたために、数字の上では大幅減益となっている。

» 2007年02月16日 07時00分 公開
[Rob Helm,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftの2007会計年度第2四半期(2006年12月31日期末)の業績は、ホリデーシーズン中のXboxコンソールの販売急伸と引き続き好調なサーバ製品に支えられ、125億4000万ドルの売上高を記録した。しかし、純益を見ると、前年同四半期は36億5000万ドルであったが、今期は26億3000万ドルに縮小している。また、デスクトップソフトウェア製品の売上および収益は、最新リリースのWindows VistaおよびOffice 2007の売上高の計上が来期に繰り延べられたために減少しているが、PC販売の伸びと企業ユーザーによるOffice購入の動きが活発であることを踏まえ、Microsoftでは2007年度後半の業績予想を上方修正している。

Microsoftの過去5四半期の財務状況 以下の表に、2006年第2四半期から2007年第2四半期までの主な財務指標を示す
2007年第2四半期 2006年10〜12月 2007年第1四半期 2006年7〜9月 2006年第4四半期 2006年4〜7月 2006年第3四半期 2006年1〜3月 2006年第2四半期 2005年10〜12月
売上高 12.54 10.81 11.80 10.90 11.84
純益 2.63 3.48 2.83 2.98 3.65
営業利益(注1) 3.47 4.47 3.88 3.89 4.66
1株当たり利益(ドル) 0.26 0.35 0.28 0.29 0.34
株式数(10億株) 9.94 10.01 10.26 10.42 10.64
純益(対売上比率) 21.0% 32.2% 24.0% 27.3% 30.9%
売上原価(対売上比率) 28.9% 15.7% 18.0% 18.6% 18.9%
研究開発費(対売上比率) 13.1% 16.5% 15.8% 14.8% 13.4%
販売費(対売上比率) 23.9% 20.3% 23.9% 21.7% 22.7%
一般管理費(対売上比率) 6.5% 6.1% 9.4% 9.2% 5.6%
現金 28.9 31.8 34.2 34.8 34.7
前受収益 11.86 10.10 10.90 8.90 8.83

単位:特記以外10億ドル

注1)営業利益は、通常の業務から得る収入から事業を行うための経常的な経費を差し引いたもの。純利益とは異なり、投資による損益や税金は含まない。ただし、訴訟和解費用は含んでいる

売上高の繰り延べが主要部門の業績に影響

 MicrosoftのWindows事業部門およびオフィス事業部門の業績は、第2四半期の売上高の一部を第3四半期(2007年3月31日期末)に繰り延べたために、数字の上では減収となった。また、1台売れるごとに損失が発生するXboxコンソールの売れ行きと対Google戦に投下されている巨額の費用が、同社の全体的な収益を圧迫し続けているものの、収益性改善の兆しが見られるようになった。

事業部別の売上および損益 以下の表に2007年度第2四半期と前年度同四半期の事業部門別売上と損益を示す。右端の欄が2007年第2四半期の前年同期に対する売上変化率である。「企業全体その他」の欄は、法務費用、全般的なマーケティング費や管理費など、どの事業部門にも分類できない経費を表す。業績数字はすべて、米国の一般に構成妥当と認められている会計原則(GAAP)に従って報告されている。営業損益には、投資による損益や税金は含まない。2006年第2四半期の売上高は、Microsoftの2007年第2四半期の決算報告に基づくもので、各事業部間で収益の再配分が行われているために、2006年第2四半期の決算報告で公表されている売上高とは異なる場合がある(最高で3300万ドル)。
事業部門 2007年第2四半期売上高 2007年第2四半期損益 2006年第2四半期売上高 2006年第2四半期損益 売上変化率
クライアント 2589 1880 3430 2661 -25%
ビジネス 3512 2169 3688 2445 -5%
サーバ&ツール 2845 1032 2438 767 17%
エンターテインメント&デバイス 2964 (289) 1687 (286) 76%
オンライン 624 (155) 594 58 5%
企業全体そのほか 8 (1165) N/A (988)
合計 12542 3472 11837 4657 6%

単位:100万ドル

クライアント部門 予想どおり、Microsoftの事業部門中最も利益率の高い同部門は、前年同四半期比で25%の減収となった。これは、PCを新規購入した場合に無料または優待価格でVistaにアップグレードできるExpress Upgrade to Windows Vista(日本国内では後述のOffice Technology Guarantee Programと合わせて「今ならどちらも安心アップグレード」の名称)プログラムの売上分11億ドルが繰り延べられたためである。この繰り延べ分は、1月30日のVistaのリリース後となる第3四半期の決算で売上に計上される予定である。この繰り延べがなければ、9%という堅調な収益成長となったはずで、MicrosoftではPC販売が好調であることをこの成長の理由として挙げている。具体的には、先の“Express Upgrade”プログラムの成功と「Windows XPのバリュープロポジション(提供価値)の存続」がこの成長をもたらしたとしている。実際、このホリデーシーズンでは、コンシューマがVistaのリリースまでPCを買い控えるという傾向は見られていない。Microsoftは今回の決算報告で、クライアント事業部の2007会計年度(2007年6月30日期末)の予想収益成長率を前回の9〜10%から11〜12%に上方修正している。この重要な材料として、同社では、Windows XP Media CenterやWindows Vista Home Premiumなどのプレミアム製品の全Windowsクライアント製品に占める割合が、前年度は52%であったのに対し、今年度は60%を超えると予測している。

ビジネス部門 売上高が最も多いビジネス事業部門の今期売上高は5%のマイナス成長となった。これはOffice 2007 Technology Guarantee Programの売上5億ドル分が繰り延べされたためである。この繰り延べ分は、次の四半期に計上される予定だ。この繰り延べがなければ、企業ユーザーによるOffice 2007の早期購入により、同事業部の収益成長率は9%上昇していた。Microsoftは、Office 2007の予想以上に好調な売れ行きを背景に、ビジネス事業部の今年度の予想収益成長率を前回の8〜9%から10〜11%に上方修正している。

サーバ&ツール部門 2006年度第2四半期比で17%アップと、予想より高い成長を見せ、引き続きMicrosoftの事業部門の中でも最も高い成長率を維持している。前四半期と同様に、SQL Serverが前年同期比で30%の売上増となり、収益拡大のけん引役を努めている。Microsoftでは、同部門の今年度の成長率を16〜17%と予測している。

エンターテイメント&デバイス部門 金額にして29億6千万ドルと、同部門の売上高は76%拡大した。現時点でXbox 360コンソールの販売台数は1千万台を超えており、これは同部門が抱える2億8900万ドルの赤字の一因となっている。この赤字分は、好調なゲームタイトルの売れ行きにより、幾らか相殺されてきている。特に好調なのは新タイトル“Gears of War”で、販売開始から2カ月で2700万本が売れている。Microsoftは今回の決算報告で、今年度末までのコンソールの販売予想台数をこれまでの1300万〜1500万台から1200万台に引き下げたほか、来四半期の前年同期比の売上伸び率は16〜25%のマイナス成長になると予測している。見方によれば、同社は故意にコンソールの売れ行きを鈍化させようとしていることが考えられる。Microsoftの最高財務責任者クリス・リデル氏によると、同社では計画どおり2008年度にエンターテインメント&デバイス部門を黒字に転換すべく、Xbox事業においてトレードオフを実施しているという。また、コンソールが1台売れるたびに損失が発生するという現実もある。

オンライン部門 前年同期比5%アップと、検索プラットフォームをOverture(Yahoo!傘下)からMicrosoft独自のAdCenterに変更して以来、検索事業における売上変化率が初めてプラスとなった。ただし、この売上の伸びは主に、20%の成長を見せたディスプレイ広告の売上によるもので、検索事業自体の業績は「喜ばしくない」ものであることをリドル氏は認めている。ComScoreおよびNielsen NetRatingsの両社とも、検索市場ではGoogleがシェアを伸ばしているのに対し、Microsoftのシェアは縮小していると見ている。Windows LiveおよびMSNサービスに対する投資も、前年同期比で167%という同事業部門の損失拡大につながっている。Microsoftは今回の決算報告で、同部門の今年度の収益成長率予想をこれまでの7〜11%から3〜8%に下方修正している。

今期の収益性は低下も、来期はやや回復の見通し

 今四半期は前年同四半期比で純益がマイナス28%、営業利益がマイナス26%と落ち込んだ。この収益縮小は、Windows VistaおよびOffice 2007の売上16億ドル分が繰り延べられたためで、来期にこの繰り延べ分が計上された時点で精算されることになる。

 この売上高の繰り延べと、ホリデーシーズン中の好調なXboxコンソールの売れ行きから、Microsoftの売上原価は対売上比率で28.9%と突出した。来期ではこの売上原価率は縮小すると予想されるが、サーバソフトウェア、コンシューマー向けハードウェア、オンライン広告など、利ざやの低い分野での成長が続いていることから、利益が目減りする傾向であることに変わりはないだろう。

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