Vistaは企業に受け入れられるか――企業システムのあり方(1/2 ページ)

鳴り物入りで登場したウィンドウズ・ビスタだが、企業ユーザーは品定めもあって様子見のところが少なくない。業務効率の向上につながる機能に加えセキュリティも大幅に強化されていることから、企業にとっては歓迎すべきクライアントOSではあるが、はたしてビスタは企業にどう受け入れられるのか。

» 2007年03月07日 07時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト]

 マイクロソフトの新しいOS「ウィンドウズ・ビスタ」の一般ユーザー向け販売が1月30日、ついに始まった。これに伴い、国内外のパソコンメーカー18社が約250機種もの新製品を発売。ウィンドウズOSの全面刷新は、一世代前の「XP」以来およそ5年ぶりとあって、同日深夜に都内各地の家電量販店で開催されたカウントダウンイベントには、数多くのウィンドウズファンが集まった。マイクロソフトはこれに先駆け、昨年11月末に企業向け出荷を開始したが、企業ユーザーの多くは新OSの品定めもあって様子見の姿勢。はたしてビスタは企業にどう受け入れられるのか。そのとき企業は何を考えるべきか――。

満を持して登場したビスタ

 「ビスタはXPの2倍、ウィンドウズ95の5倍は売れる」。マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は1月30日、都内で開いた記者会見でこう述べ、新OSの普及に自信を見せた。同社が同日、発売したウィンドウズ・ビスタは個人向けから企業向けまでユーザーに合わせて4種類。電子メールやインターネット閲覧などの基本機能を備えた「ホームベーシック」、エンターテインメント機能を充実させた「ホームプレミアム」、スタンダードなビジネスニーズに対応した企業向けの「ビジネス」、そしてそれら三つの機能を集約した最上位クラスの「アルティメット」である。またこれらに先駆け、昨年11月末には企業向けの最上位版「エンタープライズ」も出荷開始した。

マイクロソフトが1月30日に開いた記者会見

 ビスタの最大の特徴は、操作性の向上とセキュリティ機能を強化した点だ。操作性で大きく変わったのは、「エアロ」と呼ばれる画面。画面上のアプリケーションウィンドウを半透明や立体的に表示することで、ユーザーの視認性を高めている。また、ファイル検索を容易にした「クイック検索」や、映像や音楽などのデータをより直感的に扱えるようになった「ウィンドウズ・メディア・センター」(ホームプレミアムとアルティメットに搭載)なども装備している。

 セキュリティ機能の強化では、インターネットブラウザ「インターネット・エクスプローラ7(IE7)」において、カード詐欺などの手口で知られるフィッシング防止対策機能を搭載。また、ハードディスクを暗号化する「ビットロッカー」(エンタープライズとアルティメットに搭載)や、ユーザーのアクセス権を動的に制御する「ユーザー・アカウント・コントロール(UAC)」などの機能も搭載している。

システム全体のあり方を考える好機に

 まさしく鳴り物入りで登場したビスタだが、企業ユーザーは品定めもあって様子見のところが少なくない。業務効率の向上につながる機能に加えセキュリティも大幅に強化されていることから、企業にとっては歓迎すべきクライアントOSではあるが、実際に従来のOSと切り替えるとなると、既存アプリケーションの動作を確認するなど、事前の準備が欠かせないからだ。また、「XPが安定して動いており、ビスタに切り替える差し迫った理由がない」といった声も聞かれる。

 IT専門の調査会社ガートナージャパンによると、国内のパソコン市場は2005年まで3年連続でプラス成長だったが、06年はマイナス成長だった。その理由は、法人向けが06年に買い替えサイクルの谷間となり、買い控える企業が多かったからだという。2000年問題前後に買い替えたパソコンを04年にリプレースした企業が多いことから、次の買い替えは08年とみられる。

 したがって同社では「企業のビスタ導入が本格化するのは来年以降」と予測している。企業ユーザーの間でも「実際、テストや社員教育にかかる準備期間を考えると、導入が本格化するまでには少なくとも1年から1年半はかかるだろう」との見方が少なくない。

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