Vistaは企業に受け入れられるか――企業システムのあり方(2/2 ページ)

» 2007年03月07日 07時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト]
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 そうした見方があるとはいえ、パソコン市場を活気づかせる役目を担うマイクロソフトとしては、企業のビスタ導入を加速させようと懸命だ。同社は1年半後の08年半ばまでに企業顧客の半数以上をビスタに移行させる目標を掲げ、移行支援サービスの提供に力を入れている。同社によると、現時点で企業の約8割がXPに移行済みだが、一方で二世代前の企業向けOS「ウィンドウズ2000」を使い続けている企業も相当数いるという。

 そうした企業への移行支援サービスとして同社が切り札に据えているのが、OSの保守ライセンス「ソフトウェア・アシュアランス(SA)」である。SAとは一定の契約期間、ライセンス料金の一部を前払いする代わりに、契約期間内に登場する最新OSへ無償でバージョンアップできるようにするライセンスのこと。これによってXPだけでなく2000のユーザーの移行も促進したい考えだ。そのため、同社はビスタの企業向け最上位版「エンタープライズ」の割引キャンペーンも実施。ビスタ・エンタープライズを利用するために必要なライセンスであるSAを、一定の条件付きながら33%引きの価格で販売している。

 同社によると、XPが企業顧客の半数以上に利用されるようになるまで3年強かかったという。だが、ヒューストン社長は「パソコン買い替えのタイミングでビスタに移行する企業が多いだろうが、過去のOSよりは移行はスムーズに進むはず」と自信ありげだ。

根本的な企業システムを考える

 こうしたマイクロソフトの取り組みに呼応するように、ベンダー側のユニークな動きも出てきた。中でも注目されるのは、大塚商会が3月に提供開始する「ここからセキュリティ!ウィンドウズ・ビスタ バリューパック」。国内で初めてビスタ・エンタープライズをあらかじめパソコンにセットアップした製品だが、ビスタに加えXPも搭載し、新旧OSを併用可能にしたのがミソだ。

 これにより、企業顧客の「自社固有の業務ソフトを安定稼働させるためにXPを継続使用したい」との要望に応えながら、ビスタへの移行を促進する。パソコンは顧客の希望に応じ、東芝、NEC、日本ヒューレット・パッカード、レノボ・ジャパンの4社の製品から選択できる。各種設定をユーザー側で行う必要がなく、1台の価格も単一OSを搭載したパソコンに比べて2割高程度に収まるとしている。時代の流れからいえば過渡期的製品だが、企業ユーザーのニーズに対応した現実的な解の一つには違いない。

 このように、ビスタの登場で企業情報システムのクライアントは新たな環境へと向かいつつある。ただ、ビスタの導入は既存のアプリケーションの動作検証もさることながら、ハードウェアのグレードアップも不可欠となる。先述した通り、ビスタそのものは企業にとって歓迎すべきクライアントOSではあるが、ぜひクライアントを全面刷新する機会に自社のシステム全体のあり方について今一度考えてみてはどうだろうか。今の日本企業にとっては、ビスタ導入の検討もさることながら、もっと根本的なところからシステムを見つめ直す必要があるように思えてならない。

(「月刊アイティセレクト」2007年4月号のトレンドフォーカス「新OS「ビスタ」が投げかける企業システムのあり方」より)

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