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» 2007年03月13日 08時00分 UPDATE

新入学生/新社会人応援企画第2弾:第5回 達人たちの秘密の隠れ家――デブサミ、YLUGとは? (1/2)

OSS開発では、多様なコミュニティーによって業界横断的なイベントも多数行われている。ここでは、技術系の勉強会、会合を主宰されているお二人にインタビューし、コミュニティー活動の魅力を伺った。

[ITmedia]

 OSS開発にたずさわるメリットの1つとして、コミュニティーでの情報交換が挙げられる。最近のシステムは、オープンシステムの流れを受けて、標準的な技術要素の組み合わせでできている。そのため、標準技術や動向を知らなければ開発できない。OSS開発では、多様なコミュニティーによって業界横断的なイベントも多数行われているため、情報のアンテナとして有効だ。ここでは、技術系の勉強会、会合を主宰されているお二人にインタビューし、コミュニティー活動の魅力を伺った。

日本最大のオフ会? Developers Summit(通称デブサミ)

 Developers Summit(以下、デブサミ)というイベントをご存じだろうか?(図1) 年に一度、開発者たちが一堂に会して技術論を戦わせたり、情報交換をしたりするサミット(会合)だ。2003年に第1回が開催され、今年2月に行われたDevelopers Summit 2007ではのべ3000人の開発者を動員した。

図1 図1 デブサミ

 デブサミは、主催・運営こそ翔泳社というメディア企業が行っているが、企画の多くは、開発者たちからなる委員会で行われている。入場は無料で気軽に参加できるイベントだ。

 今回は、この日本最大のオフ会ともいえるデブサミを、第1回から取り仕切っている翔泳社 出版局マーケティング事業部の岩切晃子さんにお話を伺った。


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―― コミュニティーにかかわるようになったきっかけからお聞かせいただけますか?:岩切 わたしはもともとは雑誌作りにたずさわっており、米国のソフトウェア開発事情や技術情報を伝える雑誌「Dr.Dobb's Journal 日本版」(DDJJ)関連の仕事をしていました。その一環で、読者ニーズの掘り出しのため、読者をサンプリングしようと人に会っていたのがきっかけです。

 そういうことをやり始めたころは、まだわたしも若くて右も左も分からなかったのですが(笑)、いろんな人と会っているうちに、だんだん分かってくるんですね。「この人の言葉は力がある」とか、「この人は正しいことをやろうとしている」とか、「先見の明がある」とか。

 それでコミュニティーにもちょくちょく顔を出すようになったんです。もともとは読者を理解するという目的で始めたことですが、そういう風に人に会うということは、いまの時代を理解するためだけでなく、これから言葉を発信する人を見つける場所として、ライターを発掘する場でもあるんだという認識でやってきました。

―― デブサミを始められたのはどうしてですか?

岩切 4年ぐらい前なんですが、ちょうどオフショアが起ち上がってきて、日本のデベロッパーはいらなくなるんじゃないの? という不安があった時期なんです。業界はどうなっちゃうんだろうって。われわれ本を作ってる人間からすると、業界が発展しないと本って買ってもらえないじゃないですか。そういうこともあって、たった2日間ですけど、業界の人と顔をつき合わせて、一緒に業界を盛り上げようというか、いま直面している問題を考えようというのがそもそもの趣旨です。

 まぁ、もともとはわたしの発案じゃないんですけど。たまたまわたしがコミュニティー活動を続けていたこともあって、現場を引き受けることになりました。同じようなイベントって、ITベンダーの各社さんもやられているんですよね。でも、ITベンダーさんはサービスを売るという目的があるので、やっぱりちょっと現実から外れるところがあるのかなと思うんです。逆にコミュニティーで聞こえる声っていうのは、すごく切実な現実を表している気がしてならなくて。コミュニティーベースでそういう生の言葉をしゃべってもらえる場(イベント)があった方がいいんじゃないかなと頑張ってきました。

―― 運営はどのようにされているんですか?

岩切 主催者は翔泳社ということになっていますが、わたしの意識としては、なんちゃってNPOみたいな感じで、お祭りのようなものととらえています。実際に企画を立てたりするのは、開発者の皆さんからなるコンテンツ委員会というところで行われていますし、毎年いろんな企業さんに声をかけて、皆で一緒にやりましょうよという感じですね。

 会社でやってるんだけど会社じゃないみたいな(笑)。当然会社ですから、ある程度利益がでなければまずいのですが、それでも「こういうことをやりたい」とか、「あの人を呼ぼう」とか。社内からも社外からもいろんな言葉が飛んできます(笑)。せっかくやるんだからそうじゃないとやる意味がないですよね。

―― 楽しまないと、ということですね(笑)。

岩切 そうですね。ありがたいことに、最近ではスポンサーになってくださる企業でもデブサミのことをよく理解してくださっていて、協力しながらいい関係を築くことができていると感じています。

―― メーカーとコミュニティーの橋渡しみたいですね。

岩切 そうですね。……まだ実際には、わたしたちもそれほどうまく企業とコミュニティーの出会いをサポートできてはいないのですが、実際、企業とコミュニティーがうまくコラボレーションする例も増えてきています。例えば、オープンソースではないですけどSQL Serverユーザーグループなんかは、製品のβ版にフィードバックしたりしています。オープンソースでも、PostgreSQLユーザー会やOpenOffice.orgのユーザー会では、ドキュメントの整備などで製品にコミットするような動きがあるという話を聞いたことがあります。

 コミュニティー活動というと、従来のような意見交換、勉強会を想像しますが、それにプラスして、製品に対してある程度意見を言っていこうという動きが出てきているように思いますね。

―― なるほど。コミュニティーの力が、経済活動にも影響を与えはじめているのですね。

岩切 デブサミのゴールは、個人的には「人の流動化」だと思っています。会社という組織と個人の間に、コミュニティーがあったりブログがあったりする。今後はそういう関係になっていくんじゃないかなと。個人の視点からすれば、コミュニティーは自分がどういう立ち位置にいるのかを確認するものでもあるし、勉強する場でもあります。

 会社というのはコントロールの世界で、逆にコミュニティーは関心、共感の世界ですから、コミュニティー活動をすることで自分の関心を増やしたり、また新しい世界に広がっていけると思うんですよね。そしてそれはきっと、企業との関係の中でも生きてくるんじゃないかと思います。デブサミでは、そういった関心、共感の世界、そして人間性の確立をサポートしていければ幸せと考えています。

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