「予想外」は言い訳にならない?――悲観論に立つリスク分析わが社のビジネス継続性を確立する!(1/2 ページ)

BCPに限らず、リスク軽減を目的に含んだあらゆるマネジメントプロセスにおいてはリスクの発生確率と影響範囲をしっかり見極めておくことが重要だ。昨今のシステム障害の事例には、「予想外の負荷」が直接の原因となったケースも少なくない。しかし、予想外であろうと、トラブルの結果は信用失墜となって企業に降りかかる。

» 2007年03月22日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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偏執的に要素を分解すれば…

 コンピュータシステムはどのように成り立っているのか。一時期流行った「成分分析」ではないが、細かく分解していってみよう。

 システムの基本的な構成要素はハードウェアとソフトウェアに分けられる。それを動かすために必須な要素は通信回線や電力、空調などのインフラと、安定稼働を支える運用管理体制、運用スタッフ。そして、システムを利用する多数のユーザーがいる。

 さらにずっと掘り下げつつ、網羅的にリスクを並べると、このようになる。

コンピュータシステムに関連する要素とは

 ハードウェアの中にあるのは、投入された電力を熱に変換しつつ情報を処理してくれる無数の半導体、ときに接触不良を生じることもあるハンダ付け部分やコネクタ、劣化して内部の電解液を飛び散らせることのある電解コンデンサ、高速な回転で軸受けを摩耗させ続けるディスクドライブやファン…。それぞれが突発的に故障する可能性を秘めつつ、今は安定して稼働しているように見える。

 ソフトウェアは無数のコンポーネントと設定情報から成り立っていて、それぞれに脆弱性やバグが存在し得るが、表面上は正常に動作しているので分からない。

 通信回線の途中には多数のネットワーク機器があり、接続ポイントが多ければ多いほどコネクタが抜けたりケーブルが切れたりするトラブルの発生点が増えるし、接続ミスの可能性も指数関数的に増える。その先には通信事業者があり、さらにはインターネットを介して世界中へ繋がっている。

 電力線の途中にはUPSやビルの電源装置がある。そして送電線は、変電所を経由して発電所へと、想像もできないくらい長い距離を主に空中配線で辿っている。

 空調ダクトの先には空調設備があり、毎日の運用には膨大な電力(あるいはガス)や水などのリソースを必要とする。

 運用管理体制には綻びが生じやすく、特にコスト削減のためにと人員を減らせば残ったスタッフへの負担が増えるばかりでシフト表も詰まるばかり。アウトソーシングしている場合は、そのアウトソース先からさらに委託されていても、具体的にどのようになっているか、その全貌をみることは容易ではない。

 そして、なによりも問題なのは人間という存在だ。ミスや不正などを完全に排除できないし、災害や伝染病、テロなどの影響を最も受けやすいという脆弱さもあるし、社会情勢の変化によってその行動様式も常に変化し続ける厄介なものだが、これなくしてはシステムの運用ができないし、そもそもシステム自体が人間の役に立つべく作られているのだから、常に人間との関係を意識しておかなくてはならない。

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