どこにいてもメッセージを受信できるポケベルはまさにモバイル通信の先駆けだった。ポケベルとネットワークサービスはモバイルコンピューティングの発展にどのように影響したのだろうか。
今回は、ポケットベルとモバイルコンピューティングおよびインターネットの関係について言及しよう。
信じられないかもしれないが、インターネットが一般ユーザーに提供されていない1991年に、パソコンからポケットベルにメッセージを送信する「自由文サービス」が始められている。この時の端末は、8文字×4行の大型ディスプレイを持つ、容積87ccの若干大ぶりなものが提供された。
通信プロトコルは、一般ユーザーでも利用できるのがパソコン通信だけだったことから、無手順/JUST-PC/X.25の3つのプロトコルに対応していた。前述のように、インターネットは一般の人たちには全く知られておらず、パソコン通信も一部のマニアだけに利用されていたような時代だったこともあり、このサービスは普及しなかった。
そのような中で画期的な事項が起きた。インターネットの研究開発を推進しているWIDEプロジェクトにおいて、そのボードメンバーの一人だった大野浩之氏が、インターネットのオペレーション業務にこのポケットベルの自由文サービスを利用した。インターネット上にある複数のネットワークオペレーションセンター(NOC)が互いに監視し合い、相手が応答しない場合に、そのNOC担当者のポケットベルにメールを送るシステムを開発したのだ。
その際は、単に担当者を呼び出すだけではなく、障害状況をインターネットメールと自由文サービスを組み合わせてポケットベル端末にメッセージを送っていた。これが日本におけるインターネットとポケベルの最初の出会いだろう。
1996年には、最大6400bpsの伝送が行える「FLEX-TD」システムが導入され、漢字や仮名、英数字を混在させた自由文を表示できるポケットベル「インフォネクスト」がNTTドコモから発売された。同時に、インフォネクストへメッセージを送る手段の多様化が進んでいった。
例えば、米国のSky Pager向けのPCアプリケーションがインフォネクスト向けに仕様を変更して、提供された。また、当時は最も普及していたLotus社の「CCメール」や「Notes Mail」に、インフォネクストのポケットベルへのメッセージ送信機能がオプションとして販売された。
インターネットの普及に伴って、インターネットのメールシステムから直接ポケットベルへメッセージを送るための「ゲートウェアPAGE」(Pocket-bell Access Gateway Equipment)が、NTTドコモから提供されている。
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