ポケットベル受信機は、端末単体でメッセージを表示するもの(写真1)に加えて、大型液晶パネル等と組み合わせるための外部端子付きのポケベルが1996年に、PCカードタイプと電子手帳タイプが1997年に発売されている。
外部端子付き端末やPCカードタイプ端末(写真2)は、モバイルコンピューティングにおけるモデムに相当する。
この時代はユーザーの受信感度に対する評価が非常に厳しく、「**は地下室のどこそこでも受信できるのに、**はできない。どうにかしてくれ」――と言う苦情が多く寄せられていた。
そんな時代にPCカードタイプは、PCから回り込むノイズによって受信感度が低下し、しかもPCの機種によっても劣化する感度が異なることから、相談窓口での対応が非常に難しいと販売担当者から敬遠された。
この開発に深く係わった筆者としては、ノートPCや米Hewlett-Packardの「HP-100/200LX」といったパームトップコンピュータが、単にメッセージを送るだけでなく、URLを送ることでWebサイトへアクセスしたり、PCの時刻調整を自動的に行うといった、時代の最先端を行く機能を搭載していたので、非常に悔しい思いをした。
しかしながら、その後の携帯電話システムを利用したワイヤレスモデムをみてもビジネス的に成功しているとはいい難い。モバイル環境でノートPCを利用してメッセージを受けようとするユーザーは、一部の「モバイルオタク」あるいはビジネスでどうしても必要なユーザーに限られ、一般ユーザーに受け入れられないのが現状だ。そのようなことを考えると、営業と販売窓口が一丸になってこのサービスを販売してもビジネス的に成功することはなかったと考えられる。
一方で外部端子付きポケットベルは、同報送信ができるという利点から、銀行カウンターの大型ディスプレイ、防災情報システム、駅の改札に設置したディスプレイ、自動販売機など幅広く利用された。しかし、これらも携帯電話システムの進化や通信環境の整備により、過去のものへとなっていった。
次回は、ポケベルの意義と移動体通信の今後について考えてみたい。
岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授。1979年〜2006年、NTTおよびNTTドコモにて移動通信技術やコンテンツ、マルチメディアサービスの開発に従事。2006年7月より現職。
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