世界の常識BPMに日本が立ち遅れた理由業務改革の切り札(1/2 ページ)

近年BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)という概念が登場し、再びプロセス思考が見直され世界的なトレンドとなっている。

» 2007年07月03日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

プロセスを重視するBPM先進国

 BPMとは、適切なツールを活用してビジネスプロセスをモデル化(可視化)し、最適なプロセス(および業務システム)に統合・制御・自動化することで、継続的な業務改善を図るマネジメント手法のことである。

 そのポイントは、プロセスの可視化や統合・制御・自動化にはITツールを活用し、目標値を設定して、その改善度で進捗成果を図ることにある。「ビジネスの分析・評価」→「設計」→「実装」→「モニタリング」→「再分析・再評価」……、といったPDCAにあたるBPMサイクルの循環工程を、絶え間なくスパイラルアップしていくことを基本としている。

 この、「分析・評価」「設計」「実装」の部分が、従来BPRが取り組んできた工程であり、「モニタリング」を経てからの改善循環が考慮されていなかった。BPMではそこを補い、改善できる部分を着実に積み上げ、出来上がったら再度見直す。それを繰り返すことで、中長期的には業務の大幅な改革が実現できるという仕組みだ。

 一足飛びにジャンプするBPRの困難さとは対照的に、積み上げ型で日々改善するBPMが現実的と評価されるゆえんだ。

 また最近では、BPMをサポートするためのツールも増えている。ビジネスプロセスをモデル化し、ワークフローを設計・管理するものや、システム間の連携を行うミドルウェアのEAI機能を加味したもの、あるいはウェブアプリケーションサーバー上でシステム間連携を行うものなどがある。さらには、モデリングツール、プロセスエンジン、モニタリングツールなどのコンポーネントをスイート化した製品群(BPMS)も登場し、コンセプトだけで語られてきたBPMが、実装段階に入ってきたことを思わせる。

 ところで、日本に比べ欧米の普及度合いには驚くべきものがある。特にヨーロッパにはプロセスという概念がかなり以前から浸透しており、国家レベル施策で成果をあげている事例が数多く存在する。その成功事例、失敗事例に大きく刺激され、および腰だった米国もBPMを加速しているという。欧米の企業では、社内のプロセスコンサルタントやプロセスマネジャー、ディレクターなどの設置は常識となっており、プロセスに基づく組織運営を非常に重視する。しかし、これからBPMに取り組もうとしている日本では、そこまでの組織体制を組む企業はいまだ少ない。

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