2.0の要はセキュリティと人的淘汰――セールスフォース榎氏エンタープライズ2.0時代の到来(1/2 ページ)

Web2.0は、それを語る人の数だけ定義があると考えられる。エンタープライズ2.0も同様だ。今回は、SOAという切り口からエンタープライズ2.0の定義に迫る。そこで見えてきたものとは?

» 2007年08月14日 07時00分 公開
[木田佳克, 藤村能光,ITmedia]

 「エンタープライズ2.0はいつ、誰が定義したんですかね」。オンデマンドサービスを独自のプラットフォームで提供するセールスフォース・ドットコムの執行役員である榎隆司氏の発言だ。このささやかな疑問を皮切りにインタビューはスタートした。

 エンタープライズ2.0の起源は、ハーバードビジネススクール准教授のAndrew McAfee氏が2006年9月に発表した記事にあると言われているが、一般的に普及しているとは言い難い(関連記事参照)

 「エンタープライズ2.0は、Web2.0の技術やサービスを企業内に取り入れて情報共有を活性化させること」。そう考える人は多いのではないだろうか。しかし思い出してほしい。ティム・オライリー氏がWeb2.0という言葉を提唱した後、Web2.0に関するさまざまな定義が出てきたことを。エンタープライズ2.0も流行の言葉であるだけに、その定義は言葉を扱う人や企業によって異なるなど、極めて不安定だ。

 インタビューでは、これらの疑問をさまざまな切り口で企業に問いかける。企業が考えるエンタープライズ2.0の定義、その総意の先にあるものが、エンタープライズ2.0の新たなとらえ方なのかもしれない。

 セールスフォース・ドットコムといえばSaaSやSOAというイメージが強い。しかし、インタビューを通じて強調されたキーワードは意外にも「セキュリティ」と「人的淘汰」だった。

image セールスフォース・ドットコム 榎隆司執行役員

2.0のキーとなるのはセキュリティ

ITmedia エンタープライズ2.0という単語がいろいろな場所で聞かれるようになってきました。それについてどのように考えていらっしゃいますか。

 コンシューマーWebで提供していたサービスをエンタープライズ分野に取り入れるというのがコンセプトになるでしょう。エンタープライズ2.0の考え方はWeb2.0と基本的に同じで、コミュニティーや集合知などの考えを企業でも取り入れようとすることにほかなりません。有象無象さまざまなサービスがありますが、これらのすべてを企業に取り入れるわけにはいきません。コンシューマーのニーズや必要とするサービスはすぐに変化するため、企業はそれについていけなくなるからです。企業が持つ目的達成の命題が少々のことで可変するものであってはなりません。

 では一体、何が重要になるのでしょうか。私はセキュリティではないかと考えます。企業が扱うデータや資産などにはセキュリティが保証されていなければなりません。ビジネスの世界では、企業がWeb2.0を取り入れるためにはセキュリティという観点が重要になってくるでしょう。

ITmedia セキュリティという観点について、詳しく言及していただけませんでしょうか。

 例えばエンタープライズ2.0のキーワードの1つにマッシュアップがあります。デベロッパーがマッシュアップの手法を用いてさまざまなサービスを開発することが流行となっていますが、新たに誕生したプロダクト(製品)の数だけセキュリティを考えなければならないと言えます。またアプリケーション間をデータが移動する場合、IDやパスワードが必要となります。当たり前のことですが、データが守られているという最低限の保証が必要です。SaaSやSOA、エンタープライズ2.0がこれだけ流行しているだけに、もしかすれば行政などの第三機関がセキュリティを制度面から補完するような動きも出てくるかもしれません。

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