2.0の要はセキュリティと人的淘汰――セールスフォース榎氏エンタープライズ2.0時代の到来(2/2 ページ)

» 2007年08月14日 07時00分 公開
[木田佳克, 藤村能光,ITmedia]
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2.0、SOA、アプリケーション、それぞれの立ち位置

ITmedia エンタープライズ2.0という言葉がなかった時代に比べて、何が変わったと言えますか。

 われわれの考えるところでは、SOAのコンセプトをWebサービス上で展開できるようになりました。ApexコードでWebサービスをマッシュアップできる「Salesforce SOA」が代表例となります。プラットフォーム上にさまざまなサービスが乗るというイメージをしていただくと分かりやすいでしょう。サービスモジュールを組み合わせることで企業の業務プロセスを改善した例はたくさんあります。今まで概念としてとらえられていたSOAが、Webの世界で具現化しつつあると言えます。

ITmedia SOAにはたくさんの解釈があります。Web2.0やエンタープライズ2.0といったコンセプトが一般化するにつれて、SOAがなじみやすくなったということでしょうか。

 今までは各企業が独自のフローによる完結したビジネスプロセスを展開していましたが、それではうまくいきません。競争相手が日々刻々と変化し、かつそのスピードが圧倒的に速くなったからです。競争に勝つためには、ゼロからシステムを構築していては時間とコストが掛かります。外部にはさまざまな企業が提供するサービスやプロダクトがたくさんあります。それらをいかに選択して、どのように業務フローの中に組み込むかを考えるべきでしょう。

 最近になって、企業が業務フローを自由に構築できるサービスやプロダクトなど、いわゆる「コマ」が充実してきました。企業は自然とそれらのコマを活用することを考えるようになっています。まさにそれらはSOAの考え方と言えるのではないでしょうか。Web2.0の流れをくんだ変化だと考えます。

ITmedia エンタープライズ2.0は、アプリケーションという切り口にとって追い風となるのでしょうか。

 そうした時代の流れは、業務フローを構成するプロダクトを自社開発する必要はないという考え方を推し進めているとも言えます。仕事がなくなってしまうと考えるSIerやベンダーは戦々恐々としているのではないでしょうか。

 しかしアプリケーションを外部に提供するプラットフォームがあるのなら、そのアプリケーションを組み合わせてサービスとして提供するという新たな仕事が出てくると考えられます。今までは大手のSIerやベンダーがプロジェクトマネジメントを行い、下請け企業がそれらに即したサービスを作るという一元的なビジネモデルしか成立しませんでした。ですが、今はサービスやプロダクトを作る企業にとって、新たなビジネスチャンスが生まれてきたと考えるべきでしょう。

2.0の淘汰は自然か人か?

ITmedia 御社は「The Business Web(ビジネスウェブ)」というコンセプトを提唱しています。エンタープライズ2.0とは何が違うのでしょうか

 われわれが考えるビジネスウェブの定義は、企業内のユーザーが広く使うことができる共通のWebアプリケーションやWebサイトのことです。そのために、誰もが使えるWebサービスを企業向けに提供するプラットフォーム必要となります。それが「AppExchange」です。

 エンタープライズ2.0がSNSや社内ブログを用いた社内の情報共有を意味するなら、ビジネスウェブとは次元の違う考え方です。SNSなどはあくまでビジネスを遂行する上での1つの要素と考えます。さまざまな要素をどのように組み合わせて業務プロセスを作るか、その仕組みを提供するプラットフォームを整備することこそ、われわれが目指すエンタープライズ2.0ではないかと考えます。サービスや技術、ツールをエンタープライズ分野に導入して活用する、というように大局的に見れば同じ概念になるのですが。

ITmedia エンタープライズ2.0という単語が市場で流行したらどうしますか。

 エンタープライズというと、どうしても「大企業」というイメージが付いてしまいます。われわれはもともと個人事業主や中小企業へのサービスからビジネスを始めました。業種や規模にかかわらず、均等にサービスを提供したいというのがたってからの願いです。ビジネスという言葉には対象を限定しない広がりがある。そういう意味でビジネスウェブという言葉にこだわっていきたいですね。

ITmedia 御社が考えるエンタープライズ2.0とは何ですか

 コンシューマーの世界では、新しいサービスやプロダクトが日々生まれては消えていきます。まさに自然淘汰と言えるでしょう。「コンシューマーWebを作ってみれば」という声を周囲からたくさんいただきますが、ビジネスでは自然淘汰の考えは通用しないと考えます。

 企業が目的を達成し、従業員がその恩恵を受けるためには、サービスやプロダクトを逐一検証して、効果を見いださなければなりません。そこに失敗は許されないのです。企業でそれらを取り入れる場合は人員を介した慎重な判断が必要となります。この点こそコンシューマーWebとのもっとも大きな違いなのかもしれません。人的淘汰が作用するものこそ、エンタープライズ2.0と言えるのではないでしょうか。

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