VMwareと仮想化の“ビッグデー”

VMwareのIPO(株式公開)により、仮想化技術はこれまでで最大の公の舞台に立つことになる。

» 2007年08月14日 17時01分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 VMwareの発表によると、同社は8月14日の証券市場の取引開始とともに、同社の株式3300万株の新規公開を行う。

 カリフォルニア州パロアルトを本社とするVMwareが8月9日に米証券取引委員会(SEC)に修正目論見書を提出して以来、同社が今週、IPOを実施するのではないかとの憶測が高まっていた。VMwareは8月13日夕方、憶測が真実であることを認めた。

 VMwareの発表によると、8月14日朝にニューヨーク証券取引所の取引開始ベルが鳴ると、「VMW」というシンボル名で株式を公開する同社は1株当たり29ドルで自社株の販売を開始する。

 SECに提出されたVMwareの資料によると、同社が8月の第2週に目論見書の修正を発表した時点で同社は、1株23〜25ドルとしていた公開価格を1株27〜29ドルに引き上げた。

 一部の予測によると、このIPOはVMwareに莫大な現金を供給し、その額は10億ドル以上になるとみられる。しかしForrester Researchのフランク・ギレット副社長によると、IPOによる最大のメリットは、この発表でVMwareとその技術の認知度がIT業界を超えて高まることだという。同氏は7月9日に公表された仮想化業界に関する報告書の作成者である。

 「このIPOにより、VMwareはIT業界以外の人々にも注目されるようになるだろう」とギレット氏は8月13日に語った。「これは、同社の知名度が一段と高まるとともに、データセンター全体をカバーする基盤オペレーティングシステムの開発を目指す同社の信用度も向上することを意味する。また、データセンターに対して同様の野心的な計画を持ったほかのプレーヤーの活躍にも道を開くものとなるかもしれない」。

 複数のOSとアプリケーションを同一のハードウェア上で実行する技術である仮想化は、決して新しい技術ではない。IBMは1960年代に、メインフレームで初めて仮想化を採用した。

 VMwareは1998年の創業以来、x86サーバの仮想化市場の独占につながる多数の製品を開発した。その背景には、マイクロプロセッサと各種ハードウェアシステムのコンピューティング能力が、ほとんどのデータセンターあるいはIT環境における技術をサポートできるまでに高まったことがある。

 これにより、VMwareは他社の追随を許さない独占的地位を築いて市場を支配した。現在はEMCの子会社となっている同社の収支報告によると、6月30日を期末とする四半期の売り上げは2億9680万ドル。昨年同期の売り上げは1億5640万ドルだった。

 IPOの発表は、ほかの数社の大手IT企業の注目するところにもなっている。EMCは今後もVMwareの株式の約90%を支配する方針であり、IntelとCisco Systemsの両社はVMwareへの巨額の出資を発表した。これは、データセンターで仮想化技術が非常に重要になることを予想させるものだ。

 ギレット氏によると、VMwareのIPOは、同社にとって必然的なステップだという。その一方で、IPOで知名度が高まることにより、VMwareに対するプレッシャーがいっそう高まる可能性もある。というのも、同社は独自のファイルシステムなど多数のプロプライエタリなソフトウェアや技術を顧客に販売しているからだ。

 「このIPOは、同社の考え方、姿勢、態度の変化の現れだ」とギレット氏は指摘する。

 同社のIPO後に、XenSourceやVirtual Iron Softwareなどの企業(両社ともオープンソースのXenハイパーバイザーを採用している)が魅力的な代替選択肢を提供する可能性もある。両社の技術は他社製品と連携できるからだ。一方、SWsoftは、自社のOS仮想化ソフトウェア「Virtuozzo」で魅力的な提案を示し始めた。

 カリフォルニア州パロアルトに本社を置くXenSourceは8月13日、「XenEnterprise」プラットフォームの最新版をリリースした。同社幹部によると、新バージョンはVMwareの「Virtual Infrastructure」スイートの最新版に対抗できると考えているという。

 ギレット氏は報告書の中で、MicrosoftやXenSourceなどが強力な製品を出しているが、今後数年間はVMwareが仮想化市場を支配する可能性が高いと述べている。今回のIPOで同社は規模を拡大し、より多くのリソースを研究開発に投入できるようになるという。

 Pund-ITのアナリスト、チャールズ・キング氏によると、このIPOが期待通りの成果を上げれば、それはx86仮想化がメインストリームのIT技術として定着したことを示すだけでなく、VMwareのパートナーならびに業界全体を活気づけるものとなるという。

 さらにキング氏によると、IPOが成功すれば、データセンターの「次の段階の統合」(同氏)にも弾みがつくという。「先ごろサンフランシスコで開催されたLinuxWorld Conference & Expoでは、オープンソースとLinuxを仮想化技術と組み合わせる方法について多くの議論が行われた」とキング氏は語る。

 「Linuxを活用している企業のほとんどは、仮想化はオープンソース技術を強力に補完する技術であり、両技術の組み合わせはITとビジネスの統合に向けた非常に効果的なアプローチであると話していた」(キング氏)

 そのほかの仮想化ベンダーに関してキング氏は、VMwareに追いつく力を持った企業はまだ見当たらないとしている。しかしVMwareのIPOが追い風になって、売り上げが少し拡大する製品もあるかもしれないという。

 「一部のXenベースの製品は、少し勢いづくのではないかと思う」(同氏)

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