ITILの成り立ちと現状を知る初心者歓迎! ITIL連載講座(1/2 ページ)

IT運用管理は、あなたの会社でお荷物になっていないか? 運用管理者は、単なる日常トラブルの火消しに従事していないか? 今だからこそ、IT運用管理を根本的に見直そう。

» 2007年09月19日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「運用管理の過去・現在・未来」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。


ITILの基本を知る

 ITが企業の生産活動に密接に関係すればするほど、その運用管理はますます困難なものになる。このことは本稿読者には言うまでもないことであろう。一説には、IT運用管理にかかるコストは、IT投資全体の70%を占めるともいわれている。IT運用管理者の朝一番の作業は、クレームとも言えるトラブル対応のメールに目を通し、ため息をつくこと…、ではないはずだ。IT運用管理者や企業は、IT運用がビジネス活動のさまたげにならないよう、最適なIT運用管理の方法論を学ぶ必要がある。そこで欧米のさまざまなIT運用の成功事例を集め、それを一般化した「ベストプラクティス集」が作られた。それが現在のITIL(Information Technology Infrastructure Library)へとつながっている。

 上述のとおり、ITILは1980年代に英国政府機関「CCTA」(Central Computer & Telecommunications Agency)が策定した、IT運用における「ベストプラクティス集」である。言い換えれば「最適なやりかたを集めたもの」と言えるだろう。

 しかしそれは「IT運用管理の正解」ではない。例えば、あるアプリケーションを使用したら頻繁にフリーズする、その対応策はどうすればいいか? といったことは載っていない。ましてや、ルールや規範、規則のようなものでもない。そのような事象に効果的に対応するための組織づくりだとか、一連の作業の流れ(プロセス)はどのように作っておけばいいだとか、そのプロセスの導入が成功したとみなされるためには何に注目すればいいだとか、といったことが載っているのである。しかし正直、ITILをそのまま勉強したら、眠気を抑えられないということも、また事実である。

 さらにITILは、「フレームワーク」としての側面も持っている。ただ単に成功事例を集めただけでなく、集めた事例を研究して汎用化、一般化し、体系的にまとめて「枠組み」としたものである。「フレームワーク(枠組み)」は、どんな企業活動にも必ず存在する。

 例えば筆者は1年の半分は出張しており、様々なホテルに泊まっている。その多くはビジネスホテルであるが、時としてリゾートホテルに泊まることもある。ビジネスホテルが宿泊客を迎え入れる際には共通のフレームワークがある。また、同様に豪華なリゾートホテルにも一定のフレームワークがある(図1)。

図1:ホテルのフロントにおけるサービスフレームワーク(一部筆者の偏見含む)

 これらのフレームワークは、どのようなホテルにもある程度共通のものである。しかし、ビジネスホテルのフレームワークをそのままリゾートホテルに導入してもうまくいかないだろう。IT運用も同じことが言える。ITILは、ITサービスを提供している企業であれば共通に導入することのできる「IT運用管理の共通フレームワーク」である。

 しかし、そのフレームワークを完全にそのまま適用できる企業は少ない。そもそもITILは英国で作られたフレームワークなので、日本企業の文化や風土になじまないものもある。それぞれの企業独自の習慣や、今までやってきたやり方を踏襲したい部分もあるだろう。

 つまりITILについては、書いてあることをまるごと導入するのではなく、「その企業にあった方法で導入すればよい」のである。ITILが提唱しているフレームワークに則った形で、なおかつその企業にあったやり方で導入するためには、ITILを正しく理解することが肝要である。

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