世の中に登場して半世紀しか経たないコンピュータにも、歴史が動いた「瞬間」はいくつも挙げることができる。ここに紹介する「ビジュアル」もまさしくそのひとコマ――。
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1991年10月9日、米IBMと、米アップルコンピュータの首脳がそろって来日し、日本の報道関係者を前に会見に臨んだ。
会見の内容は、IBMとアップルコンピュータの包括的提携に関してであった。具体的には以下の5つである。
カライダおよびタリジェントは、アップルとIBMが、それぞれ50%ずつ出資。カライダは、200人規模、タリジェントは300人規模でのスタートを目指すとされた。
この提携は、米国では、10月2日に正式発表されていた。しかしそれから1週間後の10月9日に両社の首脳が来日し、提携内容について直接説明したことに、業界関係者は驚いた。
東京・虎ノ門のホテルオークラで行われた会見には、米アップルコンピュータのジョン・スカリー会長、米IBMのジェームズ・キャナビーノ副社長といった、この提携を主導した両社のトップのほか、アップルジャパン・武内重親社長、日本IBM・三井信雄副社長も列席。IBMとアップルの日米両首脳が顔をそろえる格好となった。
当時の状況を見れば、世界で圧倒的な力を誇る巨人・IBMにとって、ガレージからスタートしたパソコンメーカーであるアップルとの提携は、まさに異例ともいえる出来事だった。ペプシコーラでの高い実績を誇り、エスタブリッシュメントの一角を占めつつあったスカリー氏が、アップル会長に就任していたとはいえ、IBMとアップルの生い立ちの差は明白だったからだ。
そして、東海岸に本拠を置くIBMと、西海岸に育ったアップルは、まさに「水と油の関係」とまで業界ではささやかれていた。
挨拶に立った米IBMのキャナビーノ副社長が「こうした提携は、IBMには前例のないことだ。この提携は2年前では考えられなかった」と前置きしたのも、この提携が異例であったことを物語っている。
続けて、キャナビーノ副社長は、「IBMとアップルは、ある分野では競争相手だが、技術分野で共通の問題点を抱えていることを認識した。長期的な視点で捉えた場合、今回の提携が両社にとって、優れた製品を市場に投入し続けることができるようになる」と語った。
一方、ジョン・スカリー会長は、「15カ月前から、今後どんな会社とパートナーと組むべきかを模索してきた」として、提携戦略がアップルの成長につながるという同氏の基本路線ともいえる考え方を披露。「結果として、IBMとパートナーシップを取ることが、当社を成功に導くためには最も効果的であるとの結論を得た。さらに、IBMと6カ月間にわたって集中的なディスカッションを行った結果、うまくやっていけるとの手応えもあった。今後、アップルとIBMがコンピュータ業界の新たな標準を作ることになる」とコメントした。
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