Googleのオープンモバイルプラットフォームには、AT&T、Verizon、Nokiaなどの大手が参加していない。当面、その影響力は限られたものになりそうだ。
米Googleのモバイルプラットフォーム「Android」は、「何であるか」よりも「何でないか」で世間を驚かせた。
例えば、Androidは数週間前からうわさされていた、つかみどころのない「Google Phone」ではなく、Linuxベースのソフトウェアスタックだった。これにはOS、ブラウザインタフェース、ミドルウェア、アプリケーションが含まれる。
開発者は来週から、Android用のソフト開発キットを利用できる。これらはApacheライセンスバージョン2の下でライセンスされる。Android搭載の携帯電話は2008年後半に登場する見込みだ。
Googleのエリック・シュミットCEOは11月5日、Androidを発表した電話会見で、Google Phoneを開発中であることを認めることも否定することもしなかった。Androidが完全にオープンでコスト効率が高く、効率的な携帯電話アプリケーション開発手段になることを同氏は約束した。
それは重要なことだろうか。もちろんそうだ、理論上は。だが、Androidの成功を目指すGoogleと33社のテクノロジー企業が結成したOpen Handset Alliance(OHA)は、ワイヤレス分野の大手企業の幾つかを欠いているとアナリストは主張する。
まず、米大手キャリアのAT&TもVerizonもOHAに加わっていない。このことから、両社がAndroidのコンセプトに賛同していないのではないかとの憶測が流れている。
この2社の不参加は、携帯キャリアは自分たちの利益のために携帯ネットワークと端末をクローズドにしておきたいから、こうした団体への参加を避けているという見方を浮き彫りにしている。
「OHAが米国でうまくいくには、少なくともこれらキャリアの1社の加盟が必要だ」とKelsey Groupのインタラクティブローカルメディア担当上級副社長兼プログラムディレクター、マット・ブース氏は語る。同氏は、VerizonはOHA加盟に向けた合意に近づいていると確信していると付け加えた。
しかし、この段階では「近づいている」では不十分だ。IDCのアナリスト、カルステン・ウェイド氏は、AT&TとVerizonがいないため、OHAの影響は当面は限られたものになると指摘する。AT&TとVerizonに加え、英Vodafoneと仏France TelecomもAndroidの輪に加わっていない。
しかも大手の不参加はキャリアにとどまらない。世界最大の携帯電話メーカーNokiaもOHAに加盟していない。同社は全世界の携帯電話の約3分の1を販売しており、自社の端末にSymbian OSを採用している。
さらに、加盟している端末メーカーも、Androidだけを採用するという約束はしていない。
「どうやってパイを切り取るかよりも、パイを大きくすることに注力する時が来た。携帯電話に対応するさまざまなOS、多数のオペレーティング環境の可能性がある」とQUALCOMMのポール・ジェイコブズCEOは電話会見で語った。
さらにウェイド氏は、Androidは主要モバイルOSであるSymbianと苦しい戦いを展開することになると語る。Gartnerの調査では、Symbianは携帯電話市場で約70%のシェアを持っている。Linuxの市場シェアは15%で、Research In Motion(RIM)とMicrosoftはそれぞれ5%程度だ。
「こうした要因をすべて考え合わせると、それが意味するところは、無数の携帯電話が出回っても、Open Handset Allianceの端末はないということだ」とウェイド氏は語り、このような業界アライアンスが成果を上げるのが難しいのは周知のことだと付け加えた。「うまくいくとしたら、広告が売れるほど多くのコンシューマーが採用し、大量のトラフィックがあればの話だ。そうなれば売り上げが増えて、それが加盟企業に回るだろう」
ではAndroidとOHAはどうなるのだろうか?
Gartnerのアナリスト、ケン・デュラニー氏は、OHAは複数のOSによって分裂した市場にある程度の共通性を作り出そうとしている点で興味深いと語る。
ただし、同氏はこのアライアンスが、全体的なプラットフォームの分裂が起きないように十分にコントロールできるか定かではないと言う。例えば同氏は、OHAは開発者に同じ種類のLinuxソフトを使うよう義務付けてはいないと指摘する。
「Googleが積極的にある程度のルールを敷くまでは、分裂したプラットフォームが生まれてしまうかもしれない」(同氏)
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