第3回 パフォーマンス マネジメントを支える、これからのBIの姿ビジネスインテリジェンスの新潮流 〜パフォーマンス マネジメント〜(2/3 ページ)

» 2007年11月22日 07時00分 公開
[米野宏明(マイクロソフト),ITmedia]

戦略の共有

 バランススコアカードの発案者であるDr.キャプランも言うように、現実には多くの企業や組織において、戦略そのものの良し悪しよりも、戦略通りに実行できないことの問題を抱えている。全社員が戦略を正しく理解し、市場や経営環境の変化に応じて自律的に意思決定、活動できる企業や組織では、戦略プラン時には想定していなかった、しかし得てして起こりがちな問題に対しても素早く柔軟に対応をすることができる。逆に、戦略を正しく理解しない社員が多い企業や組織では、現場での素早く的確な判断ができず、対応が遅れ、戦略が実行できなくなる。

 前回取り上げた「戦略マップ」は、バランススコアカード経営を採用していない企業にとっても、戦略を万人が誤解なく共有できる非常に有用なツールだ。マイクロソフトをはじめとするBIベンダーが提供するツールの中にも、この戦略マップを生成するための機能が取り込まれていることが多い。

 今や多くの企業で企業内ポータルのような情報共有インフラが導入されているが、トップページには社長の訓示が掲載されているケースが多い。しかし、文章はデータとは異なり、発言の背景を共有できないと、読む者によって解釈が変わってしまう。ただでさえ面白くない社長の訓示を、社長の気持ちになって理解できる人などいないだろう。一方戦略マップは構造化された情報であり、異なる解釈が入り込む余地は少ない。また、ITツールの力を借りれば、そこに現状のステータスやトレンド、担当者や関連情報などをリンクして表現でき、同じスペースを使った社長の訓示よりも、圧倒的な量と質の情報を提供できる。

 この戦略マップは、組織内のコミュニケーション基盤として作用する。例えば、営業部門は売り上げの拡大を、経理部門はコストの削減を至上命題として活動するため、個々の活動シーンではどうしてもぶつかってしまう。しかし、売り上げの拡大もコストの削減も、ともに最終的には企業収益向上をもたらすものである。お互いが何をどのように目指しているのか、その成果が誰に渡されていくことで最終的に共通目標である収益向上が達成されるのかを理解できれば、お互いの立場に立って知恵の交換や協業ができるはずだ。

業務品質の向上

 業務の中には、手続きを標準化できるものと、そうでないものがある。標準化可能な手続きは、ERPやSCMなどの業務システムとして実装済みの企業も多いだろう。しかし、筆者自身が日本CFO協会の研究委員として調査した結果によると、大企業の経理財務部門における業務プロセスのほとんどすべてにおいて、スプレッドシートが併用されている。つまりほとんどの業務に標準化不可能なタスクが含まれているということである。それらの内容を見てみると、例えば予算編成における部門からのデータ収集や受け渡し、編成の際のデータ加工など、当たり前のように例外が発生するタスクが多い。そしてそのようなタスクに、非効率や損失をもたらすリスクが存在する。またこれは経理財務部門に限った話ではないことも容易に想像がつく。

 業務品質の低下は、業務処理スピードの低下をもたらす。処理スピードの低下は、業務効率はもとより、情報を含む業務の成果を次の人に伝達することが遅れるということだ。先の例で言えば、予算編成に1カ月もかかってしまうようだと、予算と実績の対比をしようにも1カ月前の過去データでしか行えず、現状を踏まえた効率的なリソース再配分など、夢のまた夢である。

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