オープンソース普及の障害は相互運用性問題

Open Solutions Allianceによると、優れた相互運用性を実現するオープンソースプロジェクトをもっと増やす必要があるという。

» 2007年12月13日 17時02分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 今日、商用のオープンソースソリューションは広く採用されているが、Open Solutions Alliance(OSA)の調査によると、普及の妨げになっている障害もあるようだ。特に、相互運用性に関する問題が足かせになっているという。

 OSAは、オープンソースソリューションの相互運用性と普及を促進することを目的として、CollabNet、SpikeSource、SourceForge.net、Unisysなどの企業によって2006年に設立された業界団体。2007年には米国および欧州で開催された5つの顧客フォーラムを後援した。これらのフォーラムには100社を超える顧客企業、インテグレーターおよびベンダーが参加した。フォーラムでの調査の結果をまとめた報告書は12月12日に発行され、これにはフォーラムの参加企業が共通して直面している6つの相互運用性問題がリストアップされている。

 これらの問題には、一元的なアイデンティティ管理(シングルサインオン)、データ連携(リアルタイムデータ同期、バッチ転送など)、可搬性(ユーザーは自社のソリューションが異なるプラットフォーム間、特に各種LinuxディストリビューションとWindowsとの間で運用できることを望んでいる)などが含まれる。

 報告書の作成責任者であるOSAのドミニック・サートリオ会長(SpikeSourceでパートナー製品を担当する管理ディレクター)が米eWEEKに語ったところによると、顧客はユーザーインタフェースのカスタマイズおよびポータルとの連携機能も望んでいるという。統合ソリューションが一貫性のあるルック&フィールを備えるようにするためだ。さらに、コンテンツ管理機能との連携により、共有コンテンツを同じバックエンドコンテンツリポジトリに簡単に連携できるようにすること、そしてコンポーネントの互換性により、特定のバージョンのコンポーネントが別のバージョンのコンポーネントと相互運用できるようになることを望んでいる、とサートリオ氏は語る。

 OSAの報告書によると、大企業が以前から問題視しているのがビジネスプロセスオーケストレーションで、彼らはSOAスタイルのベストプラクティスを用いて自社のソリューションをエンドツーエンドのビジネスプロセスに連携することを望んでいる。

 さらに大企業は、オープンソースの生産管理・監視ソリューションを、ほかのITアプリケーション/インフラを管理するのに利用するのと同じ管理フレームワークに連携できることも望んでいるという。

 相互運用性の分野でどんな取り組みが進められているのかという質問に対して、サートリオ氏は、「広範なオープンソースコミュニティーの取り組みは極めて不十分だと考えている。われわれの存在理由もそこにある。開発者の思うようにやらせていたら、彼らは新機能を開発したり、自分が得意な分野の個別ソリューションにフォーカスしようとするだろう。優れた相互運用性を実現するオープンソースプロジェクトが一から立ち上げられることはめったにない」と話す。

 「相互運用性を基本機能として扱わなければ、オープンソースソリューションの多くの潜在ユーザーがオープンソース製品を採用するのをやめ、その結果、収益機会が縮小し、将来のリリースの問題を修正するための技術リソースが減少することになるだろう」とサートリオ氏は警鐘を鳴らす。

 「これは『ニワトリが先か、卵が先か』という問題のように思えるかもしれないが、ベンダー各社は製品のバージョン1の段階から相互運用性をきちんとしておく必要がある。相互運用性を推進し、教育を行い、共同作業を促進するための組織の必要性は明らかだ」(同氏)

 サートリオ氏によると、OSAでは相互運用性を推進するために、相互運用性のベストプラクティス集を発行するとともに、メンバー企業の製品チームがそれぞれのソリューションの相互運用を可能にするための共同プロジェクトを立ち上げるのを支援しているという。

 MicrosoftがLinux/オープンソース企業との相互運用性に関して非常にオープンで積極的な戦略を展開していることについて、サートリオ氏は、フォーラムの参加者の間でそれが話題になることはめったにないとしている。

 「各種のオープンソースプロジェクトで235件の特許が侵害されているという主張など、特許を盾に取ったMicrosoftの威嚇に関するニュースはほとんどの参加者が知っているが、相互運用性に向けたMicrosoftの熱心な取り組みについて知っている人は少ない。こういった部分では、Microsoftと商用オープンソース業界が自ら損失を招いているとわれわれは考えている」とサートリオ氏は話す。

 「ユーザーにとって、知的財産というのはベンダーの問題であり、オープンかクローズドかという思想的問題は煩わしい話に過ぎないのだが、業界は知的財産や思想的問題ばかりに目を向け、ユーザーが本当に求めていること、つまり製品を連携させることについて語っていない」(同氏)

 そこがOSAにとって厄介なところだ、と数社のベンダーが指摘している。すなわち、これらのベンダーはオープンソースソリューションの利点を認識し、顧客にオープンソースを勧めようとしているのだが、その一方で、Microsoftなどのプロプライエタリベンダーの製品に対してある程度の相互運用性を保証できなければならないということだ。

 「Microsoftの法務部門は特許で威嚇しているかもしれないが、ほかの部門はオープンソースとMicrosoft製品との相互運用性を改善する任務を与えられている。われわれはMicrosoftのOpen Source Software Labの取り組みを高く評価している。この組織の任務は、オープンソースのアプリケーションとインフラが、Windows Server上でよりよく動作するようにすることだ。こういった移植性は良いことだ。ユーザーの選択肢が広がり、ユーザーがオープンソースを採用するのを拒む理由がなくなるからだ」とサートリオ氏は語る。

 OSAでは、Microsoftは今後、オープンソースとの協力をさらに進めざるを得ないと考えている。顧客がそれを要求するからだ、と同氏は話す。

 さらにOSAの報告書では、オープンソースソリューションのサポートとメンテナンスに関して懸念を表明しているユーザーもいると指摘している。彼らはこういったサービスが1カ所から提供されるのを望んでいるという。

 ユーザーは個々のソリューションに対するサポートを得ることはできるが、複数のベンダーが関係するプロジェクトを管理するのに苦労している。「結局、責任のなすり合いになってしまい、誰も連携コードのことを明かそうとしない。ユーザーは1つの電話番号だけで問題を解決できるようにしたいのだ」(サートリオ氏)

 相互運用性問題の解決を目指したOSAの計画は、これらの問題に正面から対処するものではないが、OSAはこういったサポートをめぐるケースを効果的に解決するためにベンダー各社が協力するという提案を承認した。

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