新たなオープンソース推進団体が発足

オープンソースコミュニティーのよく知られた企業10社が協力し、非営利団体Open Source Alliance(OSA)を設立した。一見、従来の推進団体と変わらないように見えるOSA。その目的を探る。

» 2007年02月16日 16時50分 公開
[Lisa-Hoover,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 オープンソースコミュニティーのよく知られた企業10社が協力し、オープンソースソリューションの業務利用を推進する非営利団体Open Source Alliance(OSA)を設立した。一見、従来の推進団体と変わらないように見えるOSAだが、その目的はほかの団体がこれまで手掛けてこなかった領域を切り開くことだという(報道発表の全文)

 OSAの広報担当で、OSA設立会員JasperSoftのCTOであるバリー・クローアンズ氏によると、OSAは、これまで十分な代弁者を持たなかった分野の必要性を満たすことを目的に設立されたという。つまり、従来のほとんどのオープンソース推進団体がライセンス問題や法律問題に終始していたのに対して、OSAは複雑なITおよびデータ管理を必要とするビジネスに対応し、オープンソースソリューションの採用を働きかけるという。

 「オープンソースの普及にはさまざまな障害があります。第1に、オープンソースに対する認知度が低いこと。第2に、ビジネスソリューションでは多くの機能が要求されるため、オープンソースを使ってソリューションを構築するのが難しいこと。ビジネスでは単機能のソリューションではなく、すべてそろったソリューションが必要とされますから」

 OSAが切り込むのはその領域だ。従って、広く、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)、システムインテグレーター、オープンソースコミュニティーの各団体から会員を構成し、プロプライエタリソリューションよりも実現しやすく安価な総合オープンソースソリューション、つまり、クローアンズ氏言うところの、現在の「重大な欠損」を埋めることを目指している。

 OSAの初年度予算はおよそ10万ドルで、弁護士費用や広告費用などといった設立費用に充てられた。クローアンズ氏によると、OSAはベンダー中立だが「会員はISVであるか、オープンソースに基づく製品を提供する団体でなければならない」という。OSAのWebサイトには「会員は、ビジネスにすぐに使える高品質のオープンソースソリューションを提供する団体とする」とあるが、具体的なライセンスの是非は明確ではない。クローアンズ氏はこの点について認め「設立を優先したため明確な姿勢を示してきませんでした。しかし、会員は、自社の製品が基礎としているオープンソースプロジェクトをサポートしなければならないという理解はあります。コードあるいは労力という形で協力し、プロジェクトを前進させるべきです」と話す。

 しかし、完全なオープンソースではない企業はOSAに加盟できない、ということではないようだ。というのは、設立会員のEnterpriseDBはプロプライエタリ製品を幾つか提供しているからだ。この点を指摘すると、同社は自社製品の多くが基礎としているオープンソースのPostgreSQLプロジェクトに大きな貢献をしているという返事が直ちに返ってきた。会員資格とライセンスについては今後数週間内に再検討する予定だが、「難しい問題だ」とクローアンズ氏も認めている。

 発足間もないOSAだが、すでに主要な目標を3つ定めている。第1に、大々的な「教育マーケティング」キャンペーンを実施し、オープンソース・ソフトウェア・スタックが実績でもプロプライエタリスイートに代わりうるという認識を広げること。第2に、従来の標準化団体と同じ道を歩まないこと。つまり、企業が自社の必要性に見合った最適なツールを選ぶための指針・推奨・最適事例を定めること。第3に、個別のビジネス要件に対応するためのプロジェクトに協力できるよう、すべてのオープンソースコミュニティーの持つリソースを結集する「メタコミュニティー」を作り上げること。

 クローアンズ氏によると、新推進団体設立のアイデアは昨年11月に浮上したという。そのとき、後にOSAを設立することになる企業数社が、ユーザーがプロプライエタリ・ソフトウェア・ソリューションに流れがちだという現状について話していた。「誰かがこのアイデアを考え出したのではありません。誰もが直面し誰もが陥るはずの問題です。誰もが無視を決め込むかFUDに走っていたのです。そしてあるとき、あるトレードショーに出かけた企業数社が『愚痴を言ってるだけでは駄目だ、行動すべし』と言いだし、始まりました」

 そして、数カ月間打診を重ねた結果、オープンソース顧客管理データベースのCentric CRMから、多様なIT運用管理ツールを提供するHypericまで、10社の賛同が得られた。設立会員には、ほかに、CollabNetOpenbravoEnterpriseDBSourceForge.net(SourceForge.netとLinux.comの親会社はともにOSTG)などが名を連ねている。OSA設立については、先週からうわさが流れていたが、正式にはニューヨークで開催されたOpen Solutions Summitで発表された。

 OSAへの参加を考えている企業はOSA Webサイトを参照するか、メールで問い合わせること。会員資格は、業務の種類と参加レベルに応じて3種類ある。ISV会員は1万ドルと、OSAに対して所定の量のボランティアを提供する。システムインテグレーター会員は5000ドルを負担するが、ボランティアの義務はない。このほか、ISV会員はボードメンバーになれるが、システムインテグレーターは事務を担当できるだけという違いがある。3つめのオープンソースコミュニティー会員は、費用負担はないが、OSAの基幹的地位にはなれない。

 会員のほか、フレンズとして参加する方法もある。「OSAを公式に支えたいが、会員ほどにはかかわれないという人が対象」(クローアンズ氏)だ。

 GroundWork Open Source(サンフランシスコ)のマーケティング担当副社長トニー・バルバガッロ氏は、同社がISV会員になることは簡単に決まったと言う。「当社はオープンソースプロジェクトを立ち上げているだけでなく、既存の優良プロジェクトを組み合わせて1つのソリューションを作り上げるという仕事もしています。そうした企業として、OSAはISVとシステムインテグレーターを結びつける場として理想的だと考えたのです。相乗効果と会員企業の持つ固有のスキル。得るべきものは大きいと感じています」

 バルバガッロ氏によると、GroundWorkは特に「さまざまなアプリケーション間のオープン・ソフトウェア・コミュニケーション・プロトコルの制定支援で指導的役割を果たすことで」OSAの目標達成を支援したいと考えている。「業務報告とアプリケーションモニタリングのようなアプリケーションをシームレスに統合できれば、その効用はすべての企業に広範におよびます」

 同様の目標を持つ団体との協力について尋ねると、バルバガッロ氏は「オープンソースというだけでなく、OSAの会員ほど多様なビジネスアプリケーションを支援している団体は、ほかに見あたりません」と述べた。

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