そんなある日、1人のユーザーからメールが受信できないという連絡を受けた。わたしも試しに自分のPCでメールの送受信ボタンをクリックしてみたが、受信中のメッセージが出てしばらくするとタイムアウトになってしまった。周囲も同じような状況だ。これは、本社側のメールサーバに異常が発生したなと思い、社内サポートに電話で確認を取ってみた。
わたし:「すいません、今、メールサーバが止まってませんか? 最近多いですよね」
電話口に出た担当者にグチるように問いかけると、意外な答えが返ってきた。
担当者:「いいえ、止まってませんよ。わたしのほうは送受信できますから」
わたし:「え? だって、うちの拠点は全滅なんですよ。てっきり、メールサーバ側の異常かと思ってました。じゃあ、なんで……」
担当者:「あれ、そちらのネットワークがすごいことになってますよ。なんか本社側からそちら側へ、大量のダウンロードが発生しているようですね」
わたし:「じゃあ、こちら側の問題ですね。すいません、調べてみます」
最初の勢いはどこへやら、すっかり意気消沈したわたしは、力なく受話器を置いた。だが、落ち込んでいる暇はない。そのとき、時計は午後5時を指していた。各代理店から報告メールが続々と届くころだ。それだけではない。営業の取引先からも連絡が増えるゴールデンタイムだ。この時間に届いたメールを処理しないと帰れない人たちがごまんといる。拠点内のイライラが徐々にヒートアップしてくるのが感じられた。
そのとき、1人の代理店営業のアシスタントがそっと耳打ちしてくれた。
アシスタント:「きっと、Aさんのメールのせいです。さっき出かける間際に『みんなにいいもの送ったから』って訳分かんない一言を残して会社を出たんですよ」
わたし:「何だろう。確認したいですね。Aさんは今どこですか?」
アシスタント:「代理店のシステム障害で呼び出されて出かけています。移動中らしくて、今連絡が取れないんですよ」
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