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» 2008年01月07日 07時33分 UPDATE

Trend Insight:オンライン図書館の蔵書が100万冊を突破

Universal Library Projectの最終目標は、Google Book Searchとは何が違うのか。著作権の対象は情報を提供する作品は対象外にすべきかのだろうか。

[Liz-Tay,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

すべての出版物のデジタル化、地理的および社会経済的な境界に縛られない情報参照の実現、技術的な発展基盤の提供、出版物の時流を超えた保存にある。

 Universal Library Projectという国境を越えた壮大な取り組みによって、100万冊を超える書籍がデジタル化された形で無償提供されている。中国、インド、エジプト、米国の各研究者によるこの共同プロジェクトの最終目標は、すべての出版物のデジタル化、地理的および社会経済的な境界に縛られない情報参照の実現、技術的な発展基盤の提供、出版物の時流を超えた保存にある。

 現在、中国語、英語、アラビア語、インドの各種言語など、20以上の言語にわたる150万冊の書籍が1つのWebポータルから参照できる。このオンライン図書館には、世界中の私有および公的なコレクションの希少書や絶版書も含まれる。

 「著作権が切れて忘れられている書籍はたくさんあるが、研究者や学生にとっては有益なものであり、一般の人々にとっても役立つはずだ」と語るのは、著作権の専門家であり、米国カーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの教授とUniversal Library Projectの共同ディレクターを務めるマイケル・シェーモス氏である。

 「デジタル化に着手しなかったら、人類は膨大な量の知識を失っていただろう」(シェーモス氏)

 Universal Library Projectでは、インターネット上のデジタル書籍は無料ですぐに閲覧でき、利用方法が簡単で、オンデマンドでの印刷と任意の言語への翻訳ができて、人間と機械の双方が読めるものにすべきだと考えている。また、One Laptop Per ChildプロジェクトのXOラップトップとebookリーダのような低コストのテクノロジーの出現により、デジタル化された書籍では、必要な本が現われるたびにお金を出して買うという方法を、一度コンピュータを購入すれば後は無料で情報をダウンロードするという方法に置き換えることによるコスト削減も期待される。

 プロジェクトの研究者の見積りによれば、Universal Libraryの蔵書数はこれまでに出版されてきた約1億冊の書籍のわずか1%にすぎない。世界中にある従来の図書館にはそうした刊行物の半分しか存在しないため、希少書のありかたを特定するのは非常に面倒な作業になるだろう、とシェーモス氏は予測する。

 「絶版書を手に入れるには、蔵書のある図書館を探し出した上で、そこに出向くか図書館同士の相互貸し出し制度を利用するかしかない。どちらにしても相当な時間がかかる。実際にその本を見てみないと自分の役に立つかどうかが分からないような場合は特にそうだ」

 2002年のプロジェクト開始の時点でメンバーたちは、ほかの研究および商用のプロジェクトによってデジタル化の完了した書籍は5万冊ほどしかないだろう、と予測していた。それ以降に設立された類似プロジェクトの1つにGoogle Book Searchがあるが、近年になって著作権違反に当たるとして非難を受けている。Googleによる取り組みと書籍のデジタル化を広く知らしめた宣伝活動を尊重しながらも、シェーモス氏はUniversal Library Projectの目標は「似て非なるもの」という。

 「われわれは人類のあらゆる出版物をデジタル化したいと考えている。だが、Googleの関係者がそうした目的を口にすることはないだろう。彼らの目的は広告販売であり、その方法の1つとしているのが、絶えず人々が訪れたくなるようなそうした豊富なコンテンツを持つWebサイトの作成だ。サンスクリット語の作品をWebサイトにアップすることには何の興味もないはずだ」

 Googleと同様、Universal Library Projectも著作権のある書籍のオンライン公開に当たっては問題に直面している。当然、現時点で著作権下にある書籍はその一部しかプロジェクトのWebポータルで参照できないが、著作権の制約がない書籍はすべての部分が無料で公開されている。

 情報の無償提供の必要性に言及するシェーモス氏は、こうした著作権による制約の問題は、出版社がデジタル書籍のもたらす低コストのビジネスモデルを採用するにつれ、そのうち縮小していくだろう、と期待を寄せている。

 「著作権の意義は少しずつ薄れてきている。デジタル化によって、出版のコストが無視できるほどに小さくなっているからだ。また、コピーにかかるコストが下がるにつれて書籍の貴重さも失われ、出版による収益力は低下している」(シェーモス氏)

 「娯楽のための読書と情報を得るための読書は違う。著作権の対象は最終的に娯楽作品に絞られ、情報を提供する作品は対象外になる、とわたしは考えている」

膨大な数への挑戦

 カーネギーメロン大学の研究者たちのアイデアから生まれたUniversal Library Projectは、設立資金として全米科学財団(NSF:National Science Foundation)から350万ドルの提供を受けている。また、中国の浙江大学とインドのインド科学大学からそれぞれ1000万ドル相当の現物での寄付を受けたほか、最近はエジプトのアレキサンドリア図書館とも提携関係を結んだ。

 世界中に50ほどあるスキャニングおよびデジタル化拠点にいる1000名以上の職員によって、Universal Libraryの蔵書は1日におよそ7000冊ずつ増え続けている。Universal Library Projectが全書籍のデジタル化という壮大な目標を達成するまでの道のりは長い。にもかかわらず、同プロジェクトの研究者たちは楽曲、アートワーク、講演、新聞のようなコンテンツまでもライブラリに含めようと考えている。

 「人類のあらゆる刊行物をそろえた全世界共通のライブラリを作り、そのコンテンツ全体を収録したサイトを世界中のあちこちで立ち上げることで、そうした作品の喪失を防ぐことができる、とわれわれは考えている」とシェーモス氏は語る。

 「そうすれば、アレキサンドリア図書館での蔵書焼失のようなことは二度と起こらない。建物が損壊しても著作品が破壊されることはないので、人類による著作物が政治体制や文化、そして運命のいたずらによって失われることはなくなるわけだ」(シェーモス氏)

原文へのリンク

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