XML 1.0勧告から10年──トラベル、食品、気象情報……つながる世界が拡大

XMLが勧告から10周年を迎える。業界ごとのメッセージ標準策定は、いまだ道半ばだが、ビジネスやサービスにXMLを活用する取り組みがさまざまな分野で始まっている。

» 2008年02月27日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 インターネットは、世界を包み込むグローバルなネットワークを生み出した。常に新しく、そして膨大な情報が高速かつ安価に流通し、仕事や生活を大きく変えようとしている。さまざまな機器や技術がこの潮流を後押ししているが、まだ大切なピースが欠けている。グローバルなネットワークは、しばしば1つの巨大なデータベースに例えられるが、データを扱うさまざまなソフトウェアがその意味を理解できるようにする「意味づけ」には、ユーザー企業の取り組みが欠かせない。

 もちろん、W3C(World Wide Web Consortium)が、「XML 1.0」(eXtensible Markup Language 1.0)を勧告として公開してから10年が過ぎ、基盤は十分に整った。ユーザーは自由にタグを定義でき、ドキュメントの文字列に意味付けを行うことで、プログラムは自在に情報を扱うことができる。

 裏を返せば、情報を表現するための共通基盤としてXMLは確立されたが、その上位の「ボキャブラリ」(分野や業界ごとに共通のタグセット)策定に向けた取り組みが必要ということだ。

 最も身近で分かりやすい例は、旅行業界で扱うデータを定義した「TravelXML」だろう。日本旅行業協会(JATA)とXMLコンソーシアムが共同で開発し、2006年6月に旅行業界における電子商取引の標準規格としてTravelXML 1.4を公開した。これまで、各旅行会社が独自に定義をしていた「旅行業EDI」(Electronic Data Interchange)の仕様を一本化できたことで、国内はもちろん海外の宿泊施設や旅行業者などをリアルタイムで結ぶことができるという。業界全体のシステム効率化が見込めるだけでなく、利用者へのサービス向上が期待できるはずだ。

スーパーと卸が協力、標準化が進む

 業界を挙げた取り組みの例としては、次世代の流通標準EDIとして2007年4月に公開された「流通ビジネスメッセージ標準」が挙げられる。バージョン1.0では、小売業と卸売業の主要な6つの取引業務である「発注」「出荷」「受領」「返品」「請求」「支払」を対象としている。

 流通業界のEDIは、1980年に日本チェーンストア協会が策定した「JCA手順」が受発注データ通信の標準として長らく使われてきた。電話回線を利用した低速のプル型データ交換は、いかにもインターネット時代にはそぐわない。扱えるデータは限られ、時間もコストも掛かる。通信モデムの入手さえ難しくなっている。

 「安くて速くて便利、ということで小売業が相次いでインターネット技術を利用したWeb EDIに切り替えたが、卸売業は個別に対応を迫られている」と話すのは、名古屋を拠点とする食品卸売業のトーカンで業務統括部長兼営業推進部長を務める牧内孝文氏。

 ITベンダー各社が開発するWeb EDIソリューションは、通信は高速化したものの、通信手順は標準から独自仕様へと後退し、そのしわ寄せは卸売業にきている。フォーマットや通信手順の違いに起因する個別開発や受信対応の負担が掛かり、危機感は募るばかりだが、卸売業としては、小売業の要請を断れば商流がなくなる。

 JCA手順を定めた日本チェーンストア協会も2005年半ばから、日本スーパーマーケットと合同で、次世代の標準EDIの在り方を検討してきた。「製」「配」「販」の情報連携を効率化する「流通サプライチェーン全体最適化促進事業」を進めていた経済産業省が、これを支援し、2007年初めには小売業4社、卸売業9社が参加する共同実証実験も行った。

 「互いに競合する小売業同士が協力し、標準化を目指した努力が実を結んだ。若干の個別対応は残るものの、統一された恩恵は大きい」と牧内氏。今後、流通ビジネスメッセージ標準は、アパレルなどへその領域か拡大される計画だ。

 牧内氏は、「今後、流通ビジネスメッセージ標準のデータ種にPOSデータが追加されれば、卸売業としても、日々のPOSデータを活用した精度の高い得意先への納品や精度の高いメーカー発注につながり、業界におけるサプライチェーンマネジメントがより現実的になる」と将来を見据える。

XMLコンソーシアム主催 XML1.0勧告10周年記念イベント

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