中堅中小企業の経営基盤改革術

SaaS over NGNが中小企業IT化の鍵に中堅中小企業の経営基盤改革術(1/4 ページ)

SaaSは普及するか、課題は何かといった議論がされている。特に中小企業はNGNなどの新たなインフラとSaaSを上手に活用することでスムーズにIT化を図れる可能性がある。経産省なども後押ししている。

» 2008年06月25日 08時00分 公開
[林雅之,ITmedia]

この記事はオンライン・ムック中堅中小企業の経営基盤改革術のコンテンツです。


 SaaS(サービスとしてのソフトウェア)は普及するか、課題は何かといった議論がされている。また、企業はどの業務をSaaSとして活用し、どの業務を自社として開発し運用するのか見極めることが重要になってきている。

SaaSのメリットとデメリットは?

 SaaSのメリットを少し整理してみよう。1.導入コストが安価、2.運用コストの削減、3.短期間で導入できるなどのメリットが考えられる。

 投資コストが不足し、専門のシステム担当者の配置が難しい中小企業にとって、SaaSは救世主のようにも見える。だが、実際には、SaaS導入を意識する中小企業はあまり多くなく、失敗だったとされるASPの二の舞になるとの意見も多い。

 SaaSに否定的な意見やデメリットを整理してみよう。1.情報漏えい(セキュリティ)リスク、2.ネットワークの障害、3.サービスの継続性、4.カスタマイズの制限などが考えられる。

SaaSの信頼性

 SaaSのセキュリティやサービスの継続性などが不安視される中、総務省は「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度」を推進している。米salesforce.comの日本法人、セールスフォース・ドットコムが提供するSaaS「Salesforce」が5月に第一号として認定された。

 ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度とは、ASP・SaaS サービスのうち、安全性、信頼性にかかわる情報を開示し、かつ要件を満たすものを認定する。ユーザーによるASP・SaaS サービスの比較、評価、選択を容易にし、認定を受けたASP・SaaS サービスの普及を図り、情報通信システムの利用を促進することを目的とする制度である。

 5月20日時点で6社の8サービスが認定されており、今後も認定される企業とサービスが増えていくことが予想される。SaaSの信頼性は、総務省が推進する制度と企業の努力により、SaaSへの安全意識は高まっていくのかもしれない。

SaaSのデメリットを補完するNGN

 SaaSに企業がアクセスするためにはインターネットインフラが必要だ。SaaSを提供するデータセンター側がいくら高セキュリティの環境でも、インターネット上にはセキュリティリスクが存在する。このセキュリティリスクを軽減するインフラとして注目されているのがNGN(Next Generation Network)である。

 NGNの主な特徴は、第1回でもとりあげたが、1.品質確保(QOS)、2.高セキュリティ、3.信頼性確保、4.オープンなインタフェースの4つが主になる。

 NGNの回線認証によりインターネットよりも高いセキュリティ環境下でアクセスが可能になる。さらに、回線認証に加え、IPアドレスやパスワードを組み合わせた多要素認証により、SaaSにかんしてユーザーから不安視されるセキュリティリスクを軽減できる。

 ネットワーク障害やサービスの継続性についてもNGNはインターネットにはないQOS(帯域保証機能)や安定した通信が期待されるので、現在のインターネット経由よりも高品質で安定した通信をすることが可能となる。

 オープンなインタフェースであるサービス提供プラットフォームと呼ばれるSDP(Service Delivery Platform)の存在も鍵になる。SDPとは、SIPと一般的なアプリケーションAPIを仲介する機能であり、SDPが整備されると、外部のサービスプロバイダーがNGNの認証や帯域保証などの機能と連携して提供することが可能となる。

 つまり、ユーザーに不満の多いSaaSのカスタマイズという点について、NGNのSDPにつなぐ連携サービスが増えてくれば、企業にとって自由度の高いカスタマイズが利用でき、さらに、課金や認証まで含めて一元的に利用することが可能となることが期待される。

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