聖徳太子になれないなら――組織の統制限界と成長IT Oasis(1/2 ページ)

どんなに偉い人でも、統制範囲は10人程度。組織管理は効率化だけを求めていくと、思ったような成果が出ない。そこで必要なのは組織を成長させる戦略である。

» 2008年07月05日 08時53分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

10人の言い分を聞き取った聖徳太子

 聖徳太子が10人の民の請願を聞く機会があった。民は我先にと一斉に訴え始めたが、太子は全ての人の訴えを聞き取り、正しく対応したという。太子の人の話を聞きわけ理解する優れた能力を称賛し、人々は豊かで聡い耳を持った人という意味で、太子を豊聡耳(とよとみみ)と呼んだという。

 イエス・キリストには12人の高弟がいたが、そのうちの1人に裏切られてしまった。最後の晩餐である。つまりキリスト様でも12人を管理するのは無理があったのである。もう一方の宗教界の雄であるお釈迦様には十大弟子がいた。叱責を受けたりした不祥の弟子もいたのだが、教えに背くような人はいなかったので管理がうまくいったのだろう。偉い人でも10人程度が統制範囲(Span of Control)ということであろうか。

 組織における統制範囲は専門家がいろいろ調べている。米国の啓蒙家デールは米国の大企業では社長直属の部下は8〜9人で、中規模企業では6〜7人だったと報告している。管理原則の父と呼ばれるファヨールは1人の管理者の指揮下で4〜6人の部下が管理限界としている。

聖徳太子のような能力があれば…(指定有形文化財『聖徳太子画像』新宿区所有)

 米軍や自衛隊の部隊編成は大隊−中隊−小隊−分隊−班と細分化されていくが、最小単位の班は4〜6人で構成される。

 もちろん、管理限界は管理者の能力や業務内容に負うところが大きい。製造現場では直接のコミュニケーション以外に工程表や図面、差し立てなどによって大部分の業務が管理統制できるので、管理職が管理する現業員は間接業務系より1ケタくらい多くできる。

 1000名の従業員を抱える大企業で6名が統制限界とすると、グループ数は100を超え、4階層から5階層のピラミッド構成が必要になる。このため組織を維持するための中間管理職という管理レベルの意思決定と、上からの指令を展開し下に伝え、下からの情報を選別、成形して上に伝える職種が多数必要になる。また、大企業ではモノ作りや直接サービスではなく、組み立て、とりまとめ、調整、打ち合わせなどの情報を取り扱う間接業務が多くなる。大企業においては階層構造と間接業務のために情報伝達と意思決定に多くの時間を費やすことになるのである。

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