IBM、カーボンナノチューブの研究で「ブレークスルー」を実現HPも新たな研究(1/2 ページ)

IBMの研究者たちは最近の論文で、ナノテクノロジー分野における「重大なブレークスルー」について説明している。プロセッサ技術とフォトニクスの分野の発展をもたらす可能性があるという。

» 2008年08月27日 08時37分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 IBMの研究者らは、新しいナノテクノロジーの分野で重大なブレークスルーを達成したとしている。これは、マイクロプロセッサの進歩に関する技術者およびIT業界の認識を変える可能性があるという。

 8月25日発行の「Nature Nanotechnology」誌に掲載された論文の中で、IBMの研究者らは、1個のカーボンナノチューブから作られたナノスケールの電子駆動型発光素子を統合、制御する技術について述べている。

 カーボンナノチューブは、炭素の六角形で構成されるシートを丸めて円筒状にしたような構造の微小なチューブで、新タイプのトランジスタへの応用が期待されている。トランジスタは、プロセッサ内部で電気信号を伝達するための微小なオン/オフスイッチである。

 IBMの論文によると、この技術は、将来のナノチューブベースの統合型電子/ナノフォトニックデバイスの開発に向けた重要な第一歩であるという。ナノテクノロジー分野におけるこういった技術進歩は、IBMやIntelなどの企業が将来世代のマイクロプロセッサおよびコンピュータ用メモリのパフォーマンスを改善する手段を変える可能性を秘めている。

 ナノテクノロジーは最先端の研究分野であり、既に小さなコンポーネントのサイズをさらに微小化させるものと期待されている。ナノテクノロジー分野では、人の髪の毛の幅よりもはるかに微細な100nm(ナノメートル)以下のサイズの材料を扱う。

 シリコンベースのトランジスタのサイズを小さくできれば、チップメーカーは1個のプロセッサにより多くのトランジスタを実装できるため、プロセッサのパフォーマンスを向上させることができるが、このアプローチはいずれ限界に達する。そうなったとき、IBMやIntelなどのチップメーカーは、新たな技術に投資する必要がある。そこで注目されると思われるのが、カーボンナノチューブやナノワイヤなどの素材や技術である。

 IBMの論文によると、研究者たちは1個のナノチューブベースの電界効果トランジスタ(FET)と2個のナノミラーを1個のチップ上に統合した。この統合により、ナノチューブからの発光を制御することが可能になり、放出光の波長とスペクトル/空間分布および発光効率を制御することができたとしている。

 これまで、新タイプのチップの開発ではレーザーが用いられてきたが、IBMの研究は、ナノレベルでもレーザが利用できることが示された。これはナノフォトニクスへの道を切り開く可能性がある。ナノフォトニクスの目標は、従来のシリコンベースのマイクロプロセッサにおいて電気信号がデータを伝送するのと同じように、光信号を制御してデータを伝送する統合回路を開発することである。

 IBMがNature Nanotechnologyの記事で紹介した新技術は、同社の研究者らが今年発表した幾つかのブレークスルーもベースとなっている。同社のエンジニアは3月、マイクロプロセッサ内で光パルス信号を送信コアから受信コアに転送する新しいシリコンナノフォトニック高帯域スイッチについて説明した。

 IBMは今年、ナノテクノロジー分野で数本の論文を発表したが、同技術を利用して新しいプロセッサを開発する方法を研究しているIT企業はほかにもある。

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