CRMの新潮流

首都圏のスーパーが電子看板で売り上げ増 ソニーが開拓する新たな「広告メディア」 デジタルサイネージ最前線(1/3 ページ)

顧客の囲い込みが急務となっている小売業界において、首都圏のスーパーOlympicはデジタルサイネージを取り入れて売り上げを伸ばしている。仕組みを提供するソニーは、ディスプレイ販売というお家芸の1つに、デジタルサイネージという追い風を取り入れ、新たな広告市場の開拓に活路を見いだしている。

» 2008年09月06日 09時17分 公開
[藤村能光,ITmedia]

この記事はオンライン・ムックCRMの新潮流のコンテンツです。


 生活必需品の値上がりのあおりを受け、小売業界では顧客の囲い込みが急務となっている。インターネット経由で商品を簡単に買えるようになった今、地元に根付くスーパーなどは、店舗に足繁く通う既存顧客のロイヤリティを高め、その購買意欲をかき立てることが必須といえる。

 首都圏でスーパーマーケット「Olympic」を展開するフードマーケット・オリンピックは、その手立てとしてソニーが提供するデジタルサイネージ(電子看板)を活用している。首都圏22店舗において、商品や店舗、特売の情報を配信する端末が151台稼働している。

Olympic高井戸店には店内に7台のデジタルサイネージが設置されている(写真左と中央)。コンテンツとして放映しているレシピは、印刷物として店頭入り口にて配布している。

 この端末では、「ミルとくチャンネル」というソニーが作った専用の番組を放映する。店舗の情報や生鮮食品の紹介、ニュース、天気予報などの情報が流れる。

 例えば、「豚肉の生姜焼き」「鮭ときのこのクリームパスタ」などのレシピを流す。スーパーを利用する顧客の約60%が売り場で購入する製品を決めるといわれている。センスの良いレシピの提案は、夕食の献立に迷う主婦の足を止め、秘められた購買意欲を駆り立てる。

 レシピや食品情報の間には、天気予報や紫外線の情報が流れる。「買い物以外の情報を流して消費者の興味を引くことで、ディスプレイを見てもらう工夫を凝らしている」(フードマーケット・オリンピックの岡澤豊フード次長)のだ。

 アニメーションや映像、音声のコンテンツは子どもをディスプレイに釘付けにさせる。買い物につきあうお父さんは、レジの待ち時間に「今日のニュース」を見て時間をつぶす――平日の主な購買層は主婦だが、休日には家族連れの客層が増える。こうした“潜在的な顧客”の取り込みにも、デジタルサイネージが寄与しているといえる。

image Olympic高井戸店の岡澤豊フード次長

 「ハウス食品の商品とデジタルサイネージの番組放送を連動させたことで、売り上げが昨年に比べ246.8%に上がった」(フードマーケット・オリンピックの大口正次執行役員商品統括部副統括部長)、「通年で見て、どの売り場でも前年度より売り上げを落としていない」(岡澤氏)。売り上げに対する効果も徐々に現れている。

 今後は、「デジタルサイネージを使うことで客数や1人当たりの買い上げ点数を増やし、他店との差別化を鮮明にしていく」(大口氏)。地域特有の情報なども積極的に配信していく考えだ。

 生活必需品の値上がりで消費者は財布のひもを堅く締めている。その中で、売り上げと顧客の両方を確保し続けなければならないという難しい局面に立たされている小売業界の各店舗。消費者に商品を買ってもらうための橋渡しとして、デジタルサイネージが大きく貢献する可能性が見えてきた。

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