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「売れていない」ことは問題ではない戦略プロフェッショナルの心得(6)(1/2 ページ)

売れていないという問題を考える際、根本原因と「言い訳」は似ていて見分けが付かないことがあります。しかし、大きな違いが1つあります。

» 2008年09月29日 15時50分 公開
[永井孝尚,ITmedia]

 戦略の策定と実践は、成功するCRMの原点です。本連載では、ビジネスの現場で戦略を策定し、実施する場合に必要な考え方をご紹介しています。(本連載は「戦略プロフェッショナルの心得――ビジネスの現場で、理論だけの戦略が実行できない理由」からの抜粋です)

 第1回のバリュープロポジション第2回のキャズム第3回の模倣戦略から脱却第4回の価格戦略を考える際の落とし穴営業とマーケティングの考え方の違いに続き、第6回目は戦略実践で必須となる仮説検証プロセスをいかに行うべきかをご紹介します。

 サイエンスライターである竹内薫氏の著書『99.9%は仮説』では、科学の基本のほとんどすべては仮説であり、必ずしも根本的な原理が明快に分かっているわけではないということが分かりやすく書かれています。マーケティングや戦略の世界も、仮説そのものです。

 市場調査は、戦略の仮説を構築したり、仮説の確かさを検証したりするために行われます。キャンペーンやプロモーションも、「このキャンペーンを行うと、顧客はこのように考え、このように反応し、そして、このような結果になる……はず」という仮説に従って行われます。いろいろな手法、ツール、モデルは「仮説を構築し、検証するための道具である」と考えて使うべきでしょう。まさに、戦略の基本は仮説検証の集合体であるといえます。

 マーケティングや戦略の基本が仮説検証なのであれば、ビジネスを成功させるためには、仮説検証を常に実行し続けることが必要になります。仮説検証をビジネスで実践していく1つの方法論がPDCAです。

 PCDAは、Plan(計画)、 Do(実施)、Check(検証)、Action(対応)の頭文字を取ったもので、仮説に基いて立案した戦略を実行した結果を検証し、そこから得た学びを次の戦略に生かしていくというプロセスです。このPDCAのサイクルを短期間で回すことで、当初立てた仮説をチューンアップし、より戦略を高度で洗練されたものに進化させ、ビジネスの成果を向上させることができます。これを愚直に何回も繰り返していくことが重要です。

 さて、PDCAの中で戦略を実行した結果、当初の成果を上げていない場合、「問題の根本原因を正しく定義して関係者と共有すること」が重要ですが、ここでよくある勘違いがあります。定義すべきは「問題の根本原因」であって、「課題」ではないということです。

 これはどういうことでしょうか?

 例えば、新規事業を立ち上げたものの、なかなか売り上げが当初のプランどおり伸びなかったとします。これを解決すべく、新しくプロジェクトチームを編成し、対策を講じる場合、往々にして「問題の根本原因は売れていないことだ。だから営業戦力を増大するのだ」という議論になる場合があります。そして議論の結果、「営業戦力増大のために、技術者からセールスへの職種転換を推進する」という対策を立てることがあります。

 これは、課題と問題の根本原因を短絡的に同じものとして結びつけてしまった例です。

 確かに、営業戦力を増大すると、何らかの効果はあるかもしれません。しかし、その前に問題の根本原因は、別のところにあるかもしれないのです。例えば「技術支援力の低下」が売れていない問題の根本原因かもしれません。この場合、技術者からセールスへの職種転換という対応は、状況をさらに悪化させる結果を生み出します。

 このように、売り上げが伸びていないのは課題ですが、問題の根本原因ではありません。

 では問題の根本原因とは、どのようなものなのでしょうか。次にあるのは、問題の根本原因の一例です。

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