最もエネルギー効率に優れたスーパーコンピュータのベスト25(1/2 ページ)

世界で最も強力なコンピュータは環境にも優しいのだろうか。2007年の世界のスーパーコンピュータのランキングではこの問題にスポットライトが当てられ、1秒当たりに実行できる浮動小数点演算回数に対する消費エネルギー量、すなわち「1ワット当たりのFLOPS」の比較が行われた。

» 2008年09月30日 07時00分 公開
[Mel Duvall,eWEEK]
eWEEK

 バージニア工科大学の研究者らが作成した「Green 500」リストは、「スーパーコンピュータの設計者は、速度や演算能力だけでなく、エネルギー消費にも注意を払うべきである」という考え方をアピールするのが目的だ。

 カーク・キャメロン氏とともにGreen 500プロジェクトを統括したバージニア工科大学のウー・フェン准教授は、「スーパーコンピュータの世界では、伝統的にパフォーマンスだけが重視されてきた」と指摘する。「消費電力を気にする人などいなかった。だが、世の中は変わった。現在、コンピュータおよびデータセンター全般が消費する電力に対する関心が高まっており、われわれはスーパーコンピュータの既成概念に疑問を投げ掛けるときが来たと考えた」

 実際、メーカー各社は毎秒数百兆回の浮動小数点演算を実行するスーパーコンピュータを開発するという目標を追求してきたため、大量のエネルギーを消費し、大量の熱を発生するコンピュータを生み出してしまった。これらのコンピュータは、正常な動作を維持するために複雑な冷却システムを必要とする。

 フェン氏によると、最初のGreen 500リストをいっそう充実した内容にするため、今後数年にわたって改訂が加えられるという。当初、Supercomputer 500ランキングに入ったコンピュータのメーカーすべてが、自社のマシンのエネルギー消費データを提供した(あるいは提供できた)わけではない。しかしこれまでに得られたフィードバック、そしてGreen 500に対する関心の高さから、このリストは将来、さらに総合的なものになり、測定手法も洗練されるとフェン氏は考えている。

 2007年のリストのトップを独占したのはIBMのスーパーコンピュータ「Blue Gene」である。実際、トップ10サイトのうち9サイトがIBM製品で占められた。IBM製品以外でトップ10に食い込んだのは、スタンフォード大学の「Dell PowerEdge」システムのクラスタだけだった。1ワット当たりのFLOPSの比較でトップになったのは、英チェシアの科学技術施設協議会ダレスベリー研究所に配備されているIBM Blue Geneスーパーコンピュータで、357.23MFLOPS/ワットを達成した。

 IBM製品が上位を独占した主な理由は、効率に優れたプロセッサを採用していることだ。新世代のBlue Geneスーパーコンピュータでは、ほとんどのスーパーコンピュータで採用されている2GHzのCPUではなく、850MHzのCPUが使われている。

 今回はGreen 500の初年度となるが、このリストの起源はフェン氏がロスアラモス国立研究所に勤務していた2001年にさかのぼる。フェン氏は当時、同研究所に配備されていたスーパーコンピュータの信頼性を維持するのに苦労していた。電力消費が激しい多数のプロセッサのせいでオーバーヒートすることが多かったからだ。

 この経験を機に、同氏は処理能力だけでなくエネルギー効率も同等に重視した新しいスーパーコンピュータの設計に着手した。その成果が「Green Destiny」というマシンである。Green Destinyは240個のTransmeta製プロセッサを使用し、動作速度は667MHzで、消費電力はわずか3.2キロワット(ヘアードライヤー2個分とほぼ同じ)だった。

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