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» 2008年11月05日 08時15分 UPDATE

アナリストの視点:クラウドの先に見えるのはアウトソーシングされたSOA (1/3)

クラウドコンピューティングからSaaSの将来を読み解く本連載。最終回となる今回は、クラウドコンピューティングを活用したSaaSの先にある「アウトソーシングされたSOA」という考えに言及する。

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

 本連載の第1回ではアプリケーションをインターネット越しに提供するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)の進化について述べた。SaaSは独自アプリケーションの開発や運用を可能にするPaaS(プラットフォームとしてのソフトウェア)、サービスとして提供される対象をハードウェアも含む情報処理システムの構成要素全般にまで広げたXaaSに進化していく。

 クラウドコンピューティングは、サービス化などによって抽象化されたコンピューティングリソースをXaaSとして活用する情報処理システムの構築・運用形態を指す。第1回の連載では、クラウドコンピューティングによってSaaSが抱える独自開発システムとの連携をどうするのかという課題を解決できる可能性を示唆した。

 第2回ではSaaSに対するユーザー側の意識を探った。データを外に預けることへの抵抗は根強かったが、クラウドコンピューティングによって独自のデータ形式や業務ロジックをSaaSと連携可能な状態で実装できるようになるのは大きな強みであることが分かった。技術的進歩により、企業が求められるコンプライアンスへの対応がユーザーの意識改革を後押しする、と結論づけた。

 これらを踏まえ、今回はクラウドコンピューティングがもたらすSaaSの将来像について、詳細を探っていく。

 ノークリサーチでは、クラウドコンピューティングを次のように定義している。

インターネット上でサービスとして仮想的に提供されるハードウェアやソフトウェア、開発環境などを含む広範なコンピューティングリソースを土台として、自身が必要とする情報処理システムを構築・運用すること。


 まずはクラウドコンピューティングがどれだけ現実味を帯びているのか、事例を見てみよう。

事例1:SaaSの補完的な開発環境としての活用例

 キヤノンマーケティングジャパンはセールスフォース・ドットコムが提供するSaaS形態のモバイル対応CRM(顧客関係管理)サービス「Salesforce Mobile」を利用している。基幹システム上の顧客マスターデータや各種案件データとSalesforce Mobileを連携するために、セールスフォース・ドットコムのクラウドコンピューティング基盤「Force.com」を活用した。Force.comのおかげで、従来よりも少ないコストでSaaSと自社内基幹システムを連携できた。

 これはSaaSの活用に必要となる社内基幹システムとの連携を、クラウドコンピューティング基盤で実装するケースである。

事例2:独自開発システムの構築・運用基盤としての活用例

 日立ソフトウェアエンジニアリングはJリーグの柏レイソルが運営するファンクラブの会員管理/年間シート予約システムを開発している。従来は自社でハードウェアやOS、ミドルウェアを開発する必要があったが、これをForce.com上で行っている。顧客が求めるシステムを短期間で開発する場合、クラウドコンピューティングの活用は有力な選択肢となる。

 クラウドコンピューティング基盤の多くは従量課金制を取り、データやアクセスの負荷に応じて料金が加算される形態だ。そのため、アクセス数がどれだけ伸びるか分からないような場合でも、過剰な初期投資を避けられる。今後は期間限定のキャンペーンサイトの構築などで活用が進むことが予想される。

 これはクラウドコンピューティングがSaaSとの連携だけでなく、独自開発システムの基盤としても活用できることを示す例である。

事例3:SaaS提供の土台としての活用例

 ソフトウェア開発企業の英CODAは、Force.com上に、SaaS形態の企業向け会計サービス「CODA 2go」を構築し、運営を開始した。オンラインストレージのベンチャー企業であるDropBoxは、Amazon.comが提供するクラウドストレージ基盤「Amazon S3」上に自社のオンラインストレージサービスを構築している。

 SaaSを提供するベンチャー企業にとって、システム投資にコストが掛かれば、経営の大きな負担となる。クラウドコンピューティングを活用することで、自社サービスを低コストで迅速に立ち上げられる。

 これはSaaSの提供基盤としてクラウドコンピューティングを活用する例だ。

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