企業とブログのおいしい関係ブログの過去、現在、未来〜日本ブログ界の5年間と今後を占う(2)(1/2 ページ)

ブログの5年間を振り返り今後を占う本シリーズ、前回は日本におけるブログの歴史を概観し、個人ブログの2つの使われ方について言及した。今回はその舞台をエンタープライズに移し、企業とブログの関係を見ていきたい。

» 2008年12月05日 16時23分 公開
[佐藤洋志(みずほ情報総研),ITmedia]

 日本の企業がブログを導入して約4年の年月がたった。エンドユーザーとの対話手段として、あるいは社内の横断的なコミュニケーションツールとして、多くのブログ導入成功事例が公表されている。そしていま、そうした先行事例に刺激を受けた多くの企業が、ブログやそれに類似したSNS、CMSといった情報系インフラに大きな関心を持ち、取り組もうとしている。

 企業がこれまでどのようにブログやSNSなどの情報系インフラと関係を築いてきたのか、そのなれ初めをひもといてみよう。

企業とブログ、その出会いと付き合い方

 90年代半ば、多くの企業が自社のWebサイトを公開し、社内では電子メールやグループウェアを導入して情報基盤を構築していた。そのころ企業は、グループウェアの掲示板のようなツールを用いて、内外のコミュニケーションを図っていた。

 商品企画や商品開発の分野が、不特定多数とのコミュニケーションが有効だと気付き始め、2004年秋ごろから、日産やP&G、味の素、リコーをはじめとした多くの企業がいわゆる商品ブログを開設。B2Cの分野でユーザーを囲いこみ、交流を図りながら新たなマーケティングの可能性を探っていった。商品主導のブログ活用法である。

 同じ時期、IRやプレゼンス強化を狙った社長ブログや広報ブログが発生。ベンチャー企業を中心として、ブランド主導のブログ活用法が定着した。

 多くの企業がブログが持つユーザー同士の深いリレーション構築機能に着目。企業内のコミュニケーションや組織活性化、情報共有にも活用できるのではないかと考え始めた。これがイントラブログの始まりである。それまでのグループウェアは、本部から支部へといった縦の指示伝達か、狭い範囲内の情報共有にとどまっていたため、部門や組織の壁を解消するツールが望まれていた。また、本部から社員への指示伝達事項が増大し、社員がすべての必要な情報を読みきれないといった問題も生じ、業務品質にかかわる事態になっていたのである。

 こうした背景から、情報の既読未読をトレースできること、通達文書に社員から質問や感想、意見などをフィードバックできるコミュニケーション機能を有していること、なによりも上から下への情報の流れを補完する横のコミュニケーションを支援し、定型化された日報では取りこぼしてしまうような情報を流通できるツールへのニーズが高まった。

 そして、イントラブログや社内SNSが誕生した。

 イントラブログの展開と前後する時期に、ニュース系サイトや個人サイトなどで、所属する企業名と実名を出すブロガーが登場するようになった。日本企業がこうした実名ブロガーを当初から積極的に認めていたかどうかは疑わしいが、ベンチャー企業や大手IT企業などが個々の社員の情報発信を認知するようになり、企業ブロガーが少なくとも業界内では有名人になり、積極的に外部との交流を行うようになった。

企業内でのブログ活用、見えてきた限界と問題点

 企業のブログ活用が広がってきてはいるが、電子メールやグループウェア、ERP、企業情報ポータルといったそのほかの情報システム基盤と比べると、ブログはまだ普及率が高いとは言えない。

 理由として、社員が自由に発信する情報をどこまでコントロールすべきか企業が見極めきれない点、管理に十分な人的リソースを投入する覚悟ができていない点が挙げられよう。情報漏えいのリスクが大きくなった昨今、ブログに企業全体で取り組む意義が感じにくくなっているのかもしれない。

 もう1つ、ブログやSNSでできることがあらかた見えてきたという点も指摘できる。ブログは個々人のキャラクターやパーソナリティに依存するものであり、どうしてもブロガー個人の力量次第で質が決まってくる。外部に向けて発信するブログでも、社内の情報共有を目的としたイントラブログでも、ブロガーが情熱を持って更新を続けないと、とたんに効力が薄れてしまうのだ。

 本来ブログは、電子メールを代替し、リアルタイムでの情報共有や知識創造が当たり前のワークスタイルにもなれる能力があるのだが、現状そこまで活用している企業は少ない。ましてや、取引先との協業のための情報基盤、すなわち企業間メディア(エクストラネット)にはまだまだ達していない。

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