東大とMSが共同でソフト開発、双方向のプレゼンが可能に2009年3月に提供開始

マイクロソフトが支援し、東京大学で開発されたプレゼンテーションシステムは、学生がペンタブレットPCを用いてスライドに「書き込み」ができる。一方的なプレゼンテーションではなく、双方向に議論ができるプレゼンテーションを支援するツールだ。

» 2008年12月08日 17時00分 公開
[杉浦知子,ITmedia]

 東京大学はマイクロソフトの支援で設置した「マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(MEET)」において、マイクロソフトの教育機関向けのオンラインサービス「Live@edu」と連携した教育支援ソフトウェアを開発している。同機関は東京大学の教育環境をITを使って変革させる全学的なプロジェクトの一環で、大学教育におけるペン入力式のPC(ペンタブレットPC)や携帯型の情報端末などを活用した学習環境を研究開発している。

 12月5日に同大学とマイクロソフトは共同で、同機関で開発したプレゼンテーションシステムを使った授業のデモンストレーションを公開した。デモが行われたのは「MEET BorderlessCanvas」。2009年3月からMEETのWebサイトで無償でダウンロードでき、Microsoft CodePlex上でソースコードを無償公開する。同システムは、教室内に複数のディスプレイを設置し、学生にペンタブレットPCを提供して利用する。学生はディスプレイに映されるプレゼンテーションの画面上にペンタブレットPCで書き込める。

 同システムの開発に携わった東京大学大学総合教育研究センターマイクロソフト先進教育環境寄附研究部門の栗原一貴特任助教は「1面のディスプレイしか使わない発表者による一方的なプレゼンテーションにはさまざまな問題がある」と指摘する。例えば、発表者がスライドを矢継ぎ早にめくることで聴衆が内容を理解できなかったり、前のスライドとの関連性が分からなかったり、疑問に思ったことを後で質問しようと思っても、書き留める余裕がないことで質問ができなかったりといったことが挙げられる。

MEET BorderlessCanvasが目指す「議論型」のプレゼンテーション

 MEET BorderlessCanvasではこれらの問題点を解消し、発表者が聴衆と相互にコミュニケーションをとりながらプレゼンテーションを展開できる。教室内に3枚設置されたディスプレイには、左から「前のスライド」「現在のスライド」「次のスライド」が映し出される。聴衆はペンタブレットPCからすべてのスライドに対して、疑問点や感想などを自由に書き込める。

 同大学で10月から同システムを使っている授業では、プレゼンテーションの発表の後、学生からの書き込みを元にディスカッションをして理解を深めたり、意見を交換したりしている。疑問点には「?」、もっと情報が欲しいと感じたら「i」、興味深いと感じたら「ニコニコマーク」を描き、プレゼンテーション終了後にスライドを最初から見直して、書き込みをした学生がどのように感じて書き込みをしたのか、どのような意見を持っているのかなどを議論する。

教室内には3面のディスプレイを設置する。左から「前のスライド」「現在のスライド」「次のスライド」を表示する(左)。聴衆はペンタブレットPCを用いてスライドに「書き込み」をする(中央)。聴衆による「書き込み」の例。疑問点には「?」など意見を書き込む(右)

 デモンストレーションに参加した学生は、「プレゼンテーションをする際、聞き手の意見を把握しながら発表したいと前から感じていた。MEET BorderlessCanvasを使うと、それが可能になる。聞き手の反応に臨機応変に対応できるスキルを身につけていきたい」と話す。発表者として聴衆と双方向のコミュニケーションをとる技術を身に付けたいという。また、別の学生は「発表中に理解できないこと、面白いことをプレゼンテーションを邪魔しないで発表者に伝えられるため、授業に対する積極性が高まった」と感想を述べた。

 東京大学大学総合教育研究の岡本和夫センター長は、「MEETでは新しい教育環境を作ることを目的に研究をしている。ソフトウェアの開発や、既存のソフトウェアの有効な活用方法を模索している。MEET BorderlessCanvasは、プレゼンテーションの質を高めるだけでなく、大学外に情報を発信していくための1つのアプローチになると考えている」とMEET BorderlessCanvasへの期待を話す。同システムを大学内の講義での利用にとどまらず、遠隔地でのプレゼンテーションへの利用などへも発展させる考えだ。

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