ウイルスもワームもさようなら――歳末、PCの大掃除だ!悲しき女子ヘルプデスク物語(1/4 ページ)

仕事納めの日には、1年間お世話になったオフィスをキレイに掃除する社員が目立つ。わたしたちヘルプデスク部門だって、サーバルームに初詣でしちゃうことがないよう、しっかりと情報システムを「大掃除」しなくちゃね。

» 2008年12月29日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

マニアックトークを華麗に回避……できなかった

 「なんで? どうして? わたしの華やかなランチタイムはどこへ行ったのよー!」

 師走になって早々の、ある日のお昼休み。わたしの頭の中にこだましたのはそんなセリフだった。うれしい、楽しいランチタイムだというのに、わたしの目の前にはキーボードオタク……、もといキーボードフェチの元上司、Aさんが座っているのだ。

 社内でのちょっとしたトラブル対応に追われていたわたしは、部署のみんなと微妙に昼食の時間がずれてしまった。1人、のんびりとランチタイムを楽しもうと決め込んで、会社近くのカフェに向かったのだが……、そのカフェが意外にも混雑していた。会社の近くに大きなイベントホールがあるので、そこの催しによってはこんなことがある。別のお店に行こうかと悩んでいたところ、カフェの店員さんが声をかけてきた。

店員さん 相席でよろしければご用意できますよ。


 外は寒いし、おなかも空いている。別のお店へ行っても、事情は同じだろう。相席とはいえ温かいご飯にありつけるほうがいいに決まってる。「お願いします」と答えたわたし。そして、通された席に座っていた相席の相手は……なんと、Aさんだったのだ。おそるおそる、声をかけてみる。

わたし ……Aさんも今からお昼ご飯ですか?


イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ

 Aさんの席には、まだ何も運ばれていない。おしぼりや水も並んでいない。Aさんは静かに「ああ、ちょっと報告書の作成に手間取ってね」とつぶやきながら、テーブル上のメニューを見ていた。どうやら、まだオーダーもしていないらしい。

 Aさんは、本当は物静かなヒトなのだ。そう、ヘンなスイッチが入らない限りは……。こちらが地雷を踏まない限り、キーボードやマウスのウンチクを聞くこともない。わたしは自分自身のために「話題選びには気を付けるぞ」と覚悟を決め、席に着いた。

 そういえば、仕事以外でAさんと2人きりになるなんて、初めてだ。どんな話をしたらいいんだろう。共通の話題なんてないぞ。そもそも、普段のAさんは異様に無口である。無理に話かける必要はないのかもしれないけど、かといって無言なのも気が詰まる。そんな雰囲気を打破するため、ふと頭をよぎった話題について、深く考えず口にしてしまったわたし。

わたし こないだ、マウスを衝動買いしちゃったんですよね。

Aさん え? なんだって?

わたし ふらっと電気屋さんに立ち寄った時、一目ぼれしたマウスがありまして「ノートPC用に」と、つい買っちゃったんです。PCカードスロットに入れておけば充電されますし、わざわざマウスを別に持ち歩く必要もなくて、便利ですよ。

Aさん ほお!

わたしの心の声 (やばっ!)


 深く考えずに口にしたこのセリフ。Aさんの「スイッチ」をオンにするには十分だった。Aさんたら、目をきらきら輝かせているではないか。あちゃー。そこへ、ちょうど店員さんがお水とおしぼりを持ってきた。

 「僕はBランチ、君は?」と、さっきより勢いの良い声で、仕切り始めるBさん。

わたし えと、じゃ、同じもので……。

Aさん Bランチを2つ、片方はご飯大盛りでね。食後の飲み物はコーヒーでいいかい?


 リーダーシップまで備わってきた。さっきまでの落ち着いた物静かなAさんはどこへ行ったのか。そんなAさんに気圧されたわたしは「はい」とだけ答えていた。

 ここまできたら覚悟を決めよう。Aさんのウンチクに付き合うのも、悪くないか……と腹を決めたわたしだったが、結局キーボードやマウスのウンチクにさらされることはなかった。なぜなら、食事が運ばれるのを待つ間、わたしが購入した新しいマウスの使い勝手を、根掘り葉掘り聞かれたからだ。もしかしたらAさんもそのマウスを狙っていたのかも。

 でも、食事がテーブルに並んだ頃、話題は別のものに移ってきたのだ……。

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