ワークフロー改革でスピード経営を実現

ワークフローを見直すことからイノベーションが始まる改革の第一歩はここから

厳しい経営環境に対応するために、業務の現場は何をすればよいのか。改革のスピードを上げるにはワークフロー改革がキーワードになる。

» 2009年01月26日 07時03分 公開
[ITmedia]

本記事は、オンライン・ムックPlus「ワークフローでスピード経営を実現」のコンテンツです。関連記事はこちらでご覧になれます。


コスト削減を前向きに進める

 「さぁ、無駄なコストを探し出して摘み取っていこう」そんな掛け声を張り上げても多くの企業の現場では、期待通りの反応は返ってこないのではないか。

 というのも、これまでも業務の現場ではあらゆる観点からコストカットを進めてきたからだ。失われた10年と言われた不況をどうにか抜け出した後も、多くの国内企業は飛躍的な業績の回復を遂げたとは言い難い状況だった。多くの業界で低空飛行の続く業容のなかで、どうにか利益をひねりだしてきたというケースが多いのだ。

 こうした状況から、単純にコスト削減を進めようとしても、「もうネタ切れ」という声がそこかしこで上がってくる可能性が高い。しかし、経営サイドから数値目標を掲げていくらかのコスト削減命令が出れば、現場を動かすリーダーとしては簡単に「No」というわけにもいかない。

 ではどうするか。残された方法はコスト削減を前向きにとらえるしかない。そのためには「業務改革」によって「仕事のスピードが上がる」「手間が減り楽になった」という目に見える効果を上げながら、同時にコストが軽減されていった、顧客から喜ばれた、というメリットを生み出していくことが鍵になってくる。

 こうした成果を上げるためには、ある視点が必要になる。業務改革は分かっているがわが社ではまず何をすればいいのか、となると判然しないケースも多い。その視点となるのがワークフローである。

 ワークフローには国際標準化団体がある。WfMC(Workflow Management Coalition)がそれだ。WfMCが発表している文書「ワークフロー・リファレンス・モデル」によると、「コンピュータを活用して効率化、あるいは自動化されたビジネスプロセス(全体あるいはその一部)」と定義している。ワークフローというと、社内の経費精算などを思い浮かべることが多いと思うが、もちろんそれだけではない。各部署、部門内での決裁作業や部門間をまたがる業務プロセスをITによって効率化、自動化することもワークフロー改革になる。

スピードアップ、簡略化がコスト削減につながる

 ワークフロー改革を進めることのメリットは、スタート時点から「経費削減」という発想に縛られることがないという点にある。もう絞り切っているのにこれ以上どうすればいいのだ、というマイナス思考からスタートせずに済む。

 最初に念頭に置くのは、業務のスピードを上げるということにある。いくつかのステップを経て進めている仕事を細かに分析していくと、「そもそもどうしてここにこのステップがあるの?」というものが必ず見つかる。疑問の見つかったステップを検証して、無駄なステップを省けば、業務のスピードは上がり、現場のスタッフも楽になる。

 ある、生活用品メーカーでは、こうした検証をすることで無駄な文書のコピーを多くの部署で減らして実質的なコスト削減も成功させた。コピーを取っている理由を現場の誰に聞いても「引き継いだときにそのように指示されたから」といったあいまいな回答しか返ってこなかったという。また「いざというときにすぐにチェックできるようにするため」という回答が返ってきたケースもあったが、ここ数年でそうしたチェック作業は実際に起こったのかを検証したところ、一度もなかったという結果が判明したという。

 スピードを上げる、という目標は多くの現場に受け入れられやすい。「無駄なコピーはないか」という掛け声でその会社はこれまでも何度も検証してきたというが、それでも隠れたところに「どうしても必要ではないコピー書類」が各所で見つかった。

「無駄をコストを削る」から「スピードを上げる」に目的を変えると、簡単に多くの発見が出てくる。

 もともとITに組み込まれていない業務フローを、新たにITで統制しようとする時、当然「業務の見直し作業」が事前に行われる。ワークフローパッケージなどを導入する際は、部門間などにまたがる業務フローを包括することが多いので、こうした無駄とりが可能になる。

電子化のメリットを最大限に生かす

 ワークフローシステムを導入する際に注意しなくてはならないのは、紙での作業をそのまま移し替えることにならないようにすることである。

 会社で使用する伝票類は、長年の積み重ねによって「こうあらねばならない」というスタイルを持っていることが多い。ワークフローを導入する時に失敗するのは、まず、こうした伝票類を整理しきれないで導入を進めてしまうと、まったく業務スピードが上がらないどころか、紙で作業していた方が楽だった、ということになりかねない。しかしこれまで使っていた伝票などのスタイルをすべて変えるというのは無理がある。ある程度スタイルを踏襲できる、柔軟性のあるツールを選定しつつ、「現状の伝票類を30%は減らす」という目標を持っておくべきだろう。

 こうしたことは承認、決裁などの業務フローにも言える。作業負担を感じつつも、いざ従来の流れから自分が外れることになると、さまざまな不協和音の源になる人も出てくる。こうしたケースにも「無駄とり」というテーマを掲げるよりも、「スピードアップ」という目標を全社共有することでスムーズに進むことが多い。自分が外れる、あるいは、業務の流れががらりと変わることがスピードアップにつながる、多くの社員が仕事がしやすくなる、ということであれば積極的に貢献したいという意欲を生みやすいのだ。

 ワークフローは、あらゆる仕事の流れをつなぐ「作業リレー」を迅速化する。そして場合によっては、人を介在する作業を自動化し、さらにスピードを上げていく。そして作業のスピードアップが贅肉のようにこびりついていた経費をそぎ落としていく。業務のスピードが上がることは「顧客満足度の向上」にもつながるわけで、決して内向きの改革ではない。不況の中でキラリと光る存在感を示す意味でも、いま最も必要とされる取り組みではないだろうか。

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