Wall Street Journalが先週、「交渉中」と報じたIBMによるSunの買収が実現すれば、Sunと関係の深い富士通の立場はどうなるのか。興味深い見方もあるようだ。
Wall Street Journalが先週18日、関係筋の話として、米IBMが米Sun Microsystemsに対して買収交渉を進めていると報じた。買収額は65億ドル以上になる見込み。この数字は17日時点でのSunの時価総額(約37億ドル)の2倍に相当する。
同紙によると、ここ数カ月の間、Sunは複数の大手IT企業に身売りの話を持ちかけていたとしており、米Hewlett-Packard(HP)はその話を断ったと伝えている。
この報道を受けて、低迷を続けていたSunの株価は急騰し、18日終値で前日に比べ約8割高の8.89ドルまで上昇した。一方のIBMの株価は同1%安の91.95ドルだった。IBMに対しては様子見といったところだが、Sunにとっては非常に好感をもって受け止められたようだ。
ただし、IBMおよびSunともこの報道に対しては現時点で何もコメントしておらず、交渉が成立するかどうかは予断を許さない。はたしてどうなるか。今週中にも方向が見えてくるだろう。
筆者は今月上旬、本コラムで「HPがSunを買収する日」と題した記事を書いた。HPとSunがSolaris搭載HP ProLiantサーバに関するパートナーシップ契約を結んだことを発端に推測したものだが、どうやら的外れだったようだ。
ただ、その記事中で述べた「クラウド時代には、立ち位置が近いことが、逆に武器になる可能性もある」との見方は、決して的外れではないと考える。ここでいう立ち位置とは、提供するソリューションであり、ビジネスの領域であり、ひいては企業文化やアイデンティティまで含めたつもりで述べた。
HPとSunが協業を始めたSolaris搭載x86サーバの展開では、SunはすでにIBMとも提携関係を結んでいる。加えてIBMのメインフレーム上でOpenSolarisを利用できるようにもしている。さらにIBMは、Sunが生み出したJavaを普及させた最大の功労者ともいえる。そうした背景とともに、Sunが抱える優良な顧客ベースはIBMにとっても大きな魅力だろう。
だが、IBMとSunでは、立ち位置で述べた企業文化やアイデンティティの違いが大きすぎるのが気にかかる。もし買収が実現すれば、IBMはもちろんSunの顧客ベースを維持しようとするだろう。しかし、はたしてSunがSunならではの革新性を持ち続けられるかどうか……。
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