Accessの使い方を教えるのは「知識の支援」ではなく「作業」かIT Oasis(1/3 ページ)

OA化ではなく、IT化の支援を必要としている中小企業は多い。しかしそれは高度な戦略的なものではなく、業務改善の積み重ねにつながるIT化支援だ。現実問題としてここに当てはまる支援スキームが抜け落ちている気がしてならない。

» 2009年03月27日 17時27分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

桜の季節に聞いた年賀状の一件

 仕事で付き合いのある会社で話をしていたら、昨年末、年賀状のことで起きたというドタバタが話題になった。「まったくお恥ずかしい話なんだけど」といいつつ、毎年数百枚の年賀状を出すのが年末の仕事、という建設工事会社の専務は説明を始めた。

 景気が悪いとはいえ、師走は何かと忙しい。取引先への年賀状を書くのを欠かすわけにはいかないが、もともと筆まめとはお世辞にも言えない専務。早い段階から準備をしていればと毎年思うものの実行できず、フーフー汗を書きながら年賀状書きの「苦行」に耐えるのが年中行事になっていた。今年も苦行に耐えねばならんのか、何とかならないものかと思案していたら、女子事務員から年賀状ソフトなるものがあると知恵を授かった。

 それはいい、早速買って来なさいと、専務は女子事務員をPCショップに走らせた。

 それが12月の初めのことで、専務は頼りになるソフトを高い金を出して買ったことですっかり安心して、得意先へのあいさつ回りなどに精を出していた。

 そしてそろそろ年賀状の準備をと気が付いたのは12月も20日を過ぎたころ。買ってきたパッケージを開けてビックリ。マニュアルがやけに分厚い……。

 最初の方に、やたらたくさん禁止事項が書いてある。どれが当てはまるのかさっぱり分からない。普段、部下の報告を元に仕事をしている専務は、分厚い本を読む習慣からすっかり遠ざかっていた。すぐにくじけて、女子事務員にバトンタッチ。女子事務員は年末の仕事を放り出して、マニュアルと格闘すること数日。なんとかソフトのインストールまではできた。ここで、もうクリスマスイブ。

 しかし、そこからが難行苦行の始まり。一生懸命、入力した得意先の住所デーがなぜか完成直前に消えてしまう。気を取りなおしてもう一度入力。今度はいくらやっても、住所が印刷されない。住所が印刷されるようになったかと思うと、得意先の役職が印刷されない。役職が印刷されるようになったかと思うと、殿と様が思ったように印刷できない。連続印刷すると同じ宛名が何度も印刷される。

 そんな悪戦苦闘の数日を過ごし、専務は悟った。私たちはこのソフトを使いこなせない。それが12月29日。大掃除も終わって、会社は明日から年末年始の休みだったのが、女子事務員を拝み倒して、30日に出て来てもらうことにした。

 「それで、どうしたんです?」と内心わくわくしながら聞いてみると、案の定というか予想通りの返事が返ってきた。

 「もう、大変だったよ。文面は手書きで一枚きれいに作って、複写機でコピーしまくったのよ。300枚もあったかな。それを事務員と手分けして、一緒に泣きながら、宛名を書いたよ。投函したのは深夜だったわ。もう、こりごり。今度からは印刷屋さんに頼むわ」

 専務はEXCELがどうにか使えるレベルで、パッケージソフトは敷居が高かったようだ。その後、私が使い方を女子事務員に指導して、翌年は印刷屋には頼まなくて済むことになった。

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