低評価の情シス子会社、生き残りの道はあるかアナリストの視点(1/2 ページ)

情報システム子会社に対する評価は、親会社およびユーザー企業のいずれも厳しい。こうした評価を払しょくし情報システム子会社の価値を高めるためにすべきことは何か。調査結果を基に考察する。

» 2009年05月13日 08時30分 公開
[石塚俊(矢野経済研究所),ITmedia]

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 情報システム子会社に対する評価は、親会社およびユーザー企業のいずれも厳しい。こうした評価を払しょくし、情報システム子会社の価値を高めるにはどうすればいいか。

 矢野経済研究所では、情報システム子会社を持つ親会社20社にアンケート調査を実施した。「コンサルティング力」「ソリューション提案力」「技術力」「サポート体制」「コスト」「対応のスピード」の6つの評価項目に対して、「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4段階の評価で聞いたところ、図1の結果が得られた。また、国内のユーザー企業677社にアンケート調査を実施し、取引のあるシステムインテグレーター/ITベンダーの評価を聞いた結果を図2に示した。

 本稿の狙いは、2つのアンケート結果を比較することで、情報システム子会社の真の評価、そして今後取るべき戦略の道筋を示すことだ。各調査は回答数に開きがあるが、あえてこれらを比べてみたい。ユーザー企業が取引をしているシステムインテグレーター/ITベンダーと情報システム子会社を比較することで、真の評価を導き出せると考えたからだ。

情報システム子会社の現在の評価取引のあるSI/ITベンダの現在の評価 (左)図1:情報システム子会社の現在の評価。(右)図2:取引のあるSI/ITベンダーの現在の評価(出典:矢野経済研究所)

 図1から、親会社が情報システム子会社を「大変満足」と評価したのは、コンサルティング力の5.0%だけだった。一方取引のあるSI/ITベンダーの評価では、すべての項目に「大変満足」の評価が付いている。

 親会社が情報システム子会社について「満足」と評価した点はソリューション提案力で、それ以外の項目はすべて50.0%以下だった。逆に、取引のあるSI/ITベンダーについては、コスト以外の評価ですべて50%以上を上回った。「不満」の評価を見ると、情報システム子会社はすべて50%以上だったのに対し、取引のあるSI/ITベンダーの評価はすべて半分以下だった。

 「大変不満」という項目については、情報システム子会社に対する親会社の回答は「サポート体制」(35.0%)、「対応のスピード」(15.0%)などが目立った。一方取引のあるSI/ITベンダーではいずれの項目も10%以下で、不満を感じている顧客企業が少ないことが見て取れる。

 これらの結果から、親会社による情報システム子会社への評価は、一般のユーザー企業による取引SI/ITベンダーよりも厳しい。この結果は、情報システム子会社は親会社にとって自社グループ内の企業であるため、コンサルティングやサービスなどを高いレベル(水準)で要求する傾向にあることを示している。

 情報システム子会社への評価は総じて厳しい。その中でも、コンサルティング力とソリューション提案力は、比較的評価が高かった。コンサルティング力は、大変満足という評価が付いている唯一の項目であり、大変不満という回答もなかった。ソリューション提案力を満足と答えたのは50.0%に上り、ほかの項目より回答の割合が高かった。ユーザー企業がSI/ITベンダーのソリューション提案力を満足と評価したのは52.3%であり、大きな開きもなかった。

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