キー配列にこだわる怪光線の主?悲しき女子ヘルプデスク物語(1/4 ページ)

IT機器オタクが多いわたしの職場。なかでもキーボードは頻繁に触れるアイテムだけに、並々ならぬコダワリを持つ人も多いのだ――。

» 2009年06月17日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

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梅雨の日の朝の怪光線?

 すっかり季節は梅雨! 暑いし、空気も蒸している。今朝もウダりながら出社したわたし。こういう日は、できれば一日穏やかに過ぎてくれるといいのに、なんてムシのいいことを考えながら、朝のコーヒーを入れる。

 そういえば朝イチバンのコーヒーは、この頃からの日課だ。デスクの定位置にコーヒーカップを置き、PCの電源を入れる。PCが立ち上がるまでの間に今日のスケジュールを確認。今日は特に急ぎの仕事はないわね……。でも、来週までに作らなければいけない資料がある。この手の仕事は前倒しでやっておかないと、いつ本来の業務(ヘルプデスク)で大きなトラブルに巻き込まれるか分からない。そう思いながら、ログオンしたばかりのPCでメールソフトを起動する。特に急ぎのメールは入ってない。良かった、良かった……。

 なんてことのないいつもどおりの朝だ、と安心していたら、なにやら後ろから熱い(怪しい)視線を感じた。ちなみにわたしの経験上、こういう時に後ろを振り返るのはお勧めできない(だれに勧めるんだ、だれに)。

 わたしの部署の場合、手を焼いているトラブルの対応を求めて直接部署を訪れる人も少なくない。そんな時は、デスクの前から後ろから、助けを求める怪しい光線が投げかけられる。ひとたびこの光線を正面から受けようものなら、逃れるすべはない。そういえばこの時もそうだった……。

 この、背後から忍び寄る、一種独特のオーラ(怪光線)をわざと無視しながら手元の仕事を始めようかとしたそのとき、オーラ(怪光線)の主はオーラ以外のものもわたしに投げかけてきたのだ。

 「ちょっといいかな?」

 あっちゃー。声をかけられたらもう最後、これを無視できるほど、わたしのキモは座っていない。あきらめて、声がしたほうへと振り返る。

 声の主はキーボードオタクの……、もといキーボードに並々ならぬこだわりを持つAさんだ。それはともかくとして、今日はわざわざわたしの席までやってきて……ってほど、ここは広い部署ではない。Aさんの席からなら、ここまで来なくても声は十分届くのに、今朝はわざわざわたしを迎えに来たようだ。

 しかも「ちょっといいかな?」という声は、やや抑えられているような、Aさんにしては遠慮がちな声だった。何かあったのだろうか? Aさんが声を低くさせなければならないような、何か深刻なトラブルでもあったのだろうか。とりあえず、メモと筆記用具を持って彼についていくわたし。

イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ
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